長期使用で起こる「メラノーシス」
刺激性下剤を長期間使っていると、アントラキノンによる神経叢への働きかけが弱くなることから、薬を使っても腸が動きにくくなります。腸管の運動が弱くなり、腸がたるんで伸びたようになります。また、メラノーシスといって大腸の粘膜が黒く変色します。メラノーシスは腸の粘膜が壊死したものが、マクロファージという免疫を担当する細胞に取り込まれた結果生じます。メラノーシスは刺激性下剤を長期間、大量に服用した指標となります。
一時的にメラノーシスになったとしても、刺激性下剤を中止すると回復して、正常の粘膜に戻ります。しかし、長期間、大量に刺激性下剤を服用していると、メラノーシスは不可逆的になると言われています。
便秘外来には市販の刺激性下剤(コーラックやビューラックなど)を毎日60錠も飲まないと便が出ないような人が受診します。少しでも刺激性下剤を減らすように薬を調整して頑張るのですが、なかなか減らすことができません。完全に耐性がついてしまうと、元通りに戻すのは非常に難しいのです。
ですから、耐性がつくような刺激性下剤は極力減らして、どうしても出ない時の頓服として、便刺激性下剤以外の薬を治療の基本とすることが大事です。
「どっさり」「すっきり」「自然な便通」をうたう便秘茶
便秘対策としてお茶を試したことがありますか? 「便秘」「茶」のキーワードでインターネットを検索してみると便秘に効果のあるお茶がいくつも紹介されています。
こういったお茶の広告には「どっさり」「すっきり」「自然な」「するする」「ぺったんこ」などの言葉が並び、スリムな女性のお腹の写真が添えられていたりします。
一見して、お茶を飲むことによって「自然な」便意で、便が「どっさり」「すっきり」出て、お腹が「ぺったんこ」になるとイメージできるようにサイトが作られていますが、販売メーカーは便通の改善を謳っているわけではありません。あくまで消費者である私たちが、「便秘が良くなるお茶なんだ」と感じるように広告サイトを作っているだけなのです。
お茶などのいわゆる健康食品では、便通改善の効能があると謳ってはいけないことが法律で定められています。病気の治療や予防に役立つものは「医薬品」であり、その認可や販売は法律によって厳しく制限されています。以前は薬事法と呼ばれた「医薬品、医療機器等の品質、有効性および安全性の確保等に関する法律(略称:医薬品医療機器等法)」によって、健康食品は医薬品と誤認されるような効能効果を表示、広告することができません。
健康食品は医薬品ではありません。このため、便秘茶(「便秘」「茶」で検索して出てくるお茶のことです)を販売するメーカーは、法律に触れない範囲で「当社の製品は便秘に効果があるよ!」とイメージできるような広告を出しているだけで「便秘を治す」とは一言も言っていません。メーカーに直接尋ねても、「便秘が治ります」とは決して言いません。
便秘茶のメリットは簡単に買えて手軽に利用できることでしょう。ドラッグストアでも買えますし、インターネット通販サイトでポチッとクリックするだけであっという間に手に入ります。