「育休といえば女性」が抜けきらない50代男性社員たち

これに関しておもしろいエピソードがある。あるサービス業の人事部長が管理職研修で3年前に「育児・介護休業法の改正」の説明をしたときのことだ。

「人事としては新しい改正内容を事務的に淡々と説明し、男女に関係なく取得できることは周知のはずなので、あえて女性や男性という言葉を使わなかったが、最後に『男性の部下が育休取得を申請してきても遅滞なく人事部に連絡してください』と言ったら、会場の一部がどよめいた。よく見ると、50代管理職が集まる一角だけがキョトンとした顔をしている。じつは育児休業は女性社員だけの規定だと思っていたようだ。育休といえば女性が取るものだと考えている50代社員が多いのには驚いた」

その管理職がたとえ男性が取得できるとわかったとしても、快く取得を認めるとは限らない。前出の連合調査の「取得したかったが、取得できなかった」人の理由には、「取得すると昇進・昇給に悪影響が出る」(12.1%)、「取得すると異動になる」(5.7%)、「上司に取得したら不利益を被ると言われた」(5.4%)、「上司に取得しない方がいいと言われた」(4.6%)といったパタハラに該当する行為で取得を諦めている。

嫌味、仕事を任せない……横行するパタハラの現実

パタハラとはパタニティハラスメントのことで「男性はこうあるべきだという先入観により、上司・同僚が男性の育児休業など子育てを疎外する言動などの嫌がらせのこと。マタニティハラスメントと同様に事業主はパタハラを防止する措置を義務づけられている。

しかし、実際にパタハラは横行している。育児休業取得後のパタハラとして「復帰したら嫌みを言われた」(15.3%)、「責任ある仕事を任せられなくなった」(8.3%)、「昇進・昇給できなかった」(6.9%)のほか「低い人事評価を受けた」「復帰したら新人のような扱いをされた」と、答えていることでもわかる。

男性の育休取得に無理解な職場が多く、パタハラも少なくない中で法改正によって「1カ月程度の取得」は可能なのか。建設関連会社の人事部長は「1カ月程度が限度」と語る。

「1カ月程度であれば、仕事の締めや月次決算の伝票処理など細かい作業は上司が他のメンバーに仕事を割り振ることでカバーできるだろう。当社でも男性で育休を取ったのは最高でも1カ月だが、それが2~3カ月になると、さすがに抜けた穴を埋めるのは難しい。頭を抱える上司も出てくるかもしれない」