緊急事態宣言解除後の7月以降、全国で自殺者数が増加傾向に。8月の自殺者は1854人と前年比16%増、このうち女性は651人で同40%も増えています。いったい何がここまで女性を追い詰めるのでしょうか。産業医の井上智介さんに伺いました。
日記を書く女性
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女性の自殺者が増えている背景

警察庁からの発表があったとおり7月以降、女性の自殺者数が明らかに増えています。その背景には、新型コロナウイルス問題の影響による雇用や経済的な問題、パートナーからのDV被害、子育ての悩みがあると言われています。

一つひとつ見ていきましょう。まず雇用の問題については、女性は男性よりも非正規のケースが多いため、今回の新型コロナ問題でも仕事を失いやすく、それが経済的な問題に発展しています。

妻が仕事をせずに家にいると、夫に「家庭のために働いてくれよ」「一生懸命仕事を探せよ」と言われたり、「コロナを言い訳に仕事を見つけるのをサボっているんじゃないか」と心ない言葉をぶつけられたりすることもあります。そういった理解のない夫の言葉をストレートに受け取ると、自分は家庭や家計に負担をかけていると思い詰めてしまいます。

また夫が在宅勤務になり、夫自身の環境の変化からストレスが増えて、お酒のトラブルが表面化する事例も増えています。在宅勤務になると終業=家となるので、どうしても飲む時間が長くなり、量が増えてしまうからです。翌日も在宅勤務なら、お酒がちょっと残っていてもバレない。そこでセーブしないといけないという感覚が薄くなるので、もともと大酒飲みの人なら、情緒がおかしくなるぐらい酒量が増えて、妻に当たり散らし、それがエスカレートしてDVに発展してしまうこともあり得るのです。

そこで女性もすっと助けを求められればよいのですが、今は助けを求めにくい環境。しかもこの状況がいつまで続くかわからないとなると、追いつめられてもおかしくありません。