日本の育休文化は、女性のキャリアの邪魔をしている

世界ダボス会議が毎年発表する「GGGI(男女格差指数)」のランキングで、日本とともに毎年下位を争っている韓国。実は韓国では、2000年初頭に女性の育休取得率が20%を切る状況でしたが、法改正や給付金の給付率を上げるなど施策を重ね、女性の取得率はほぼ100%近くなり、男性も13%と上昇し、日本の倍の取得率となっています。

韓国の制度で面白いのは、最初に育休取得した親(主に母親)は3カ月間80%の給付で、次に取得した親(主に父親)は3カ月間100%給付となり、パートナーに育休のバトンを渡すと給付率が上がる仕組みになっていることです。

私は、待機児童対策のための法改正にあたり、2017年3月に衆議院の厚生労働委員会に参考人として招致された際、男性育休の普及につながる施策として「パートナーにバトンを渡すと給付率が上がる」韓国式を提案しました。ただ、残念ながら、その年の3月末に育児休業が2年まで延長可能となり、実質女性側が育休を延長する仕組みとなったため、男性育休取得推進にはつながりませんでした。

女性だけに休業させる育休制度は、女性の長期的なキャリア形成の妨げになります。育休から復帰した女性を補助的な業務に異動させ、昇進や昇格には縁遠いキャリアコースに乗せることを「マミートラック」と言いますが、女性のみが休業することを前提とした育児支援は、マミートラックを助長させることになるのではないでしょうか。

世界有数の手厚い制度が整備されているにもかかわらず、男性育休の取得率が圧倒的に低い現状は、マミートラックを生み出し、日本の女性活躍を妨げる一因になっているとも言えます。

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天野 妙(あまの・たえ)
合同会社Respect each other代表、みらい子育て全国ネットワーク代表

日本大学理工学部建築学科卒業。株式会社リクルートコスモス(現コスモスイニシア)等を経て、性別・役職・所属・国籍に関係なく、お互いが尊敬しあう社会づくりに貢献したいと考え、起業。ダイバーシティ/女性活躍を推進する企業の組織コンサルティングや、研修など、企業の風土変革者として活動する傍ら、待機児童問題をはじめとした子育て政策に関する提言を行う政策起業家としても活動中。