コロナショックによって一気に広がった在宅勤務。これは、会社員の今後の働き方や生活スタイルにどんな影響をもたらすのでしょうか。職と住の境界があいまいになることで起こる「大問題」とは──。家族社会学が専門の筒井淳也先生が解説します。
建築家の職場(自宅)
※写真はイメージです(写真=iStock.com/Pekic)

ワークスペースの掃除は家事か仕事か

在宅勤務は、コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言で全国に広がりました。宣言の解除以降は出社に戻す企業も出てきてはいますが、それでもコロナ以前に比べると、在宅勤務をしている人の割合は間違いなく増えています。

日本では、およそ100年かけて「働く場」と「住む場」の分離が進んできました。現在の会社員の働き方や生活スタイルも、それを前提として出来上がっています。しかし今、この2つの場は、逆に融合するほうへ向かいつつあります。これは大きな転換点となるはずです。

この現象は今後、働き方や生活スタイルに大きな変化をもたらすでしょう。そうなった時、私は3つの問題が起きるだろうと考えています。

ひとつは、有償労働と無償労働をどこで分けるかという問題です。有償労働は賃金・(金銭的な)報酬が発生する仕事のことで、主に会社などの「働く場」で行うもの。無償労働は賃金・報酬が発生しない家事や育児などで、主に「住む場」で行うものです。

職住が分離している場合には、有償労働と無償労働はある程度はっきりしています。しかし例えば、自宅に仕事をするスペースをつくってそこを掃除した場合、これを「仕事」と見るか「家事」と見るかは微妙な判断です。会社で自席の周りを掃除する場合は、出社しているわけですから明らかに仕事の一環です。しかし、これが自宅となると、仕事と家事の境界は途端にあいまいになってきます。