日本の男性育休は短すぎる
なお、「残業しない国」として知られるドイツの男性育休取得率は34.2%。取得率では北欧諸国に及びませんが、ドイツの制度にはユニークな点が多くあります。給付金を半額にする代わりに育休期間を倍にすることが選択できたり、復職後に両親ともに短時間勤務をすると別途手当が支給されたりと、単に育休取得の促進だけでなく、その後も持続可能な働き方が根づくような仕掛けがうかがえます。
また、日本とともに世界での出生率下位を争うポルトガルは、2009年に産後10日間の父親限定休業を義務化しました。義務化期間を除いた取得率は23.8%ですが、義務化の対象となる産後10日間の取得率は68%。義務化されているにもかかわらず、100%にほど遠い数字には疑問を持たれる方も多いと思いますが、これらの数値は、出生数に対しての比率であり、公務員や銀行員などが含まれておらず、実際の取得率よりも低く見積もられているようです。2000年における男性育休取得率は11%だった同国ですので、義務化によって取得率が高まった国として、日本が見習える部分は多くあると思います。
取得率もさることながら、私が注目しているのは、日本で育休を取得した人たちの取得期間です。
厚生労働省「平成30年度雇用均等基本調査」によると、育休を取得して職場復帰した男性の実際の取得期間は、5日未満が約36%、2週間未満と合わせても約71%と、ごく短期間が大多数を占めていることが分かっています。2012年や2015年と比べると、5日未満の取得者数が減り、5日~2週間未満が増えたことは読み取れますが、2週間未満で括ると、2012年が約61%、2015年が約75%。つまり、男性育休の取得期間は、2週間以内が標準と言えるでしょう。女性の取得期間と比べると、その短さは歴然としています。
実は日本の制度は世界一
ここまで日本が世界的に見ても出生率が低いこと、そして同じように出生率が低い国と比べても、男性の育休取得率がいまだに一桁台と致命的に低いことを示してきました。
ただ、制度の中身に目を向けると、日本は世界的に見ても非常に手厚い男性育休制度を有しています。2019年に発表されたユニセフの「子育て支援に関する報告書」によれば、「有償の産休・育休取得可能週数」において、日本は30週と、取得可能週数で見れば世界第1位。2位の韓国(17週)、3位のポルトガル(12週)を大きく引き離しています。
とはいえ、報告書では、日本の低い取得率に対して厳しい目が向けられています。35%の男性が「取得したくても取得できない」という日本の実態が指摘され、人手不足、男性育休が歓迎されない空気、作業負荷、育休がキャリア形成に支障をきたすなどの理由で取得が難しいことも併せて紹介されています。