「男性が家庭を養う」という価値観が強すぎる

近年ヨーロッパでは女性の駐在員が増えています。企業で女性の出世が増えたことに伴い、海外に数年間駐在する女性の数も増えたというわけです。駐在の良いところは今さら言うまでもないかもしれませんが、現地の家賃や子どもの学費などが会社からカバーされることが多いということ、また外国にいるということでさまざまな手当てが出るため、母国で働いている時よりも経済的に余裕があることです。外国の文化に触れることができるのも貴重です。

日本に駐在する欧米人女性がよく聞かれる質問があります。それは日本人からの「ご結婚はされているのですか?」という質問。そして答えがイエスの場合は驚きの声があがることが少なくありません。

日本に駐在している既婚の欧米人女性のなかには子どもがいる人もいますが、配偶者の男性がいわば専業主夫となり子どもの面倒を見ている場合もあります。これも日本では驚きの対象であることが少なくありません。それが仲良さそうな夫婦であっても、日本ではこういったスタイルをうらやましがる女性があまりいないことを個人的には残念に思います。

筆者は「妻が仕事できるように応援し家事や育児に積極的な旦那さん」のいる家庭は単純に「いいな」と思うのですが、日本では「男性が女性や子どもを食べさせるべき」との考えが根強いためか、そういった夫婦はいわゆる憧れの対象にはならないようなのです。でも最後まで「男性が家庭を養うこと」にこだわっていては、女性に活躍のチャンスが来てもうまく波にのれないのではないでしょうか。

実はパートより管理職のほうが、自由がきく

女性が管理職になりたくない理由として「重い責任のある仕事は避けたい」「自分の自由な時間を持ちたい」などの声が多く聞かれます。「子どものことを考えるとパートのほうが時間の融通がきく」ということもよく聞くのです。しかし日本の場合、ヨーロッパと違い、パートなのに休みがとりにくい職場も少なくありません。パートにもかかわらず「責任」という名のもと仕事量が正社員並みに多い職場もあります。しかしパートは正社員と違い簡単に首を切られる可能性があることを考えると、果たしてどこまで「パートが自由」なのか微妙なところです。

パートではない一般職の正社員にしても、一般職である以上、出世は望めません。事務職はいくらでも「代わりがきく」のが現実です。「上のほうにいくと責任も重い」「それよりも責任が重くない仕事のほうが自由でいい」という発言を聞くことがありますが、ヨーロッパと日本で合計44年間生きてきて周りにいる女性を観察していて思うことは、「女性なら、仕事上、なるべく上のほうのポジションを目指したほうが、自由がきく」ということです。

経営陣や上のほうのポジションになってしまえば、出勤時間や退出時間など自由に調整できる場面も出てきます。逆にパートや一般職の仕事の場合、出社時間や退社時間にフレキシビリティーはありません。子どもを持つのだったら、むしろ「上」を目指したほうが時間のことも含め子育てはしやすい場合もあります。

女性は子育てを考えて「仕事上、小さく収まればよい」と考えがちです。でも女性が「決済のできる立場」になれば、ある意味「こっちのもん」です。組織の上にいけば、自分が会社で「何かを変える」ができます。言葉は悪いですが、下っ端のまま会社の悪口を言っていても会社は変わらないのです。筆者ももっと早くこのようなことを自覚していたら、今頃企業の経営陣になり子どももいたかもしれません(笑)。