早期リタイアしたい人の残念すぎる思考法

まずは「早期リタイアしたいと考えている人の思考法」ですが、そもそも早期リタイアをしたいという人の考え方の根底にあるのは「仕事が苦行である」という発想です。実を言うと、これは典型的な「サラリーマン脳」の発想なのです。会社勤めの人にとって仕事は確かに苦行以外の何ものでもないと言っていいでしょう。なぜなら自己決定権がないからです。自分ではこうやりたい、と思っていても会社の方針が別な方向に決まれば、それに従わざるを得ません。自分にとって本意ではないことをやるのはストレスです。

もちろん自分が何かのプロジェクトリーダーになって差配できる立場になれば楽しいでしょうが、そんな時ばかりではありません。恐らく会社生活の7~8割はそんなストレスだらけのはずです。だから早く辞めたいと思うのです。

でも逆に「仕事が楽しみ」と思ったらどうでしょう?

職業を道楽化できるかどうか

明治時代に造園家、林学者として活躍した本多静六という人がいます。この方は、日本の「公園の父」と言われていて、日比谷公園や北海道の大沼公園を設計した人です。彼はまた株式投資家としても有名で、大学で教鞭を執っていた頃に「月給4分の1天引き貯金」を実践してお金を貯め、それを元手に投資で巨万の富を築き、大学教授を退官すると同時に全財産を寄付したという立派な人です。この方が書いた『私の財産告白』という本は今日に至るまで多くの人に資産形成の名著として読み継がれており、私も何度も読み返しています。その本の中にこんなフレーズがあります。

「私の体験によれば(中略)、人生の最大幸福は職業の道楽化にある。富も名誉も美衣美食も、職業道楽の愉快さには比すべくもない。道楽化を言い換えて、芸術化、趣味化、娯楽化、遊戯化、スポーツ化、もしくは享楽化等々、それはなんと呼んでもよろしい。すべての人が、おのおのその職業、その仕事に、全身全力を打ち込んでかかり、日々のつとめが面白くてたまらぬというところまでくれば、それが立派な職業の道楽化である」

スキルの向上度がまったく違ってくる

「職業の道楽化」=仕事を趣味として楽しむ、というのは本当に素晴らしいことなのですが、実際にはなかなか難しいでしょう。フリーランスや自営業なら「仕事=楽しみ」と言えるかもしれませんが勤め人ではなかなかそうは行かないからです。

でもたとえ会社勤めであったとしても、自分が担当する仕事の中で“好きなこと”や“得意なこと”を見つけることは可能だし、そうすべきです。なぜなら、「好きなことだから、一生懸命取り組む」のと、「仕事だから仕方なくやる」のとでは、スキルの向上度や能力が高まるレベルが全く違うからです。早期リタイアすることを夢見て今の仕事を苦痛と思ってやっている人は、仕事を楽しんでやっている人には絶対に勝てません。したがって会社の中でも給料は上がらないし、将来独立したり転職したりしてもうまく行かないことが多いと言っていいでしょう。