しかし当初は、「休みの日まで働かせるのか!」と反発の声も多かった。そこで東原さんはワークショップを開催するなどして、ワーケーションは柔軟な働き方の選択肢のひとつであることを理解してもらうために奔走。そのかいあって、試験的に導入した翌年の18年度には、1年間で174人が利用。これは対象の間接部門において約2割の人数にあたる。19年度はそれ以上になる見込みだという。
同社では、社外で仕事をする際に「テレワーク」か「ワーケーション」かを明確にして上司に申請することになっている。規定の違いがあるからだ。テレワークの実施中は会社側が緊急時などは出社を促すこともできるが、遠い旅先などで行うワーケーションにはその規定がない。また、あくまでも休暇がベースなので、仕事にあてる日数は、休暇期間の半分を超えないことと制約を設けている。
「現場部門で働く従業員からも、『ワーケーションに近い制度を導入できないか検討してみたい』という声が上がっています。たとえば、支店のある他県へ旅行した際にはその支店で業務できるようにするなど、可能性を模索中です」
ワーケーションを導入したことで、「旅先などで仕事をするような働き方はできない」と決めつけていた意識が、会社全体で変わり始めた。同社の働き方の改革はますます進むだろう。
帰省先の夫の実家でテレビ会議もこなしました
19年の夏休み、広島にある夫の実家で家族で過ごした中丸亜珠香さん。
「夏休みの直前に、大事な打ち合わせが休暇予定の期間に入ってしまって。私の都合でほかのメンバーに迷惑はかけたくないし、家族を犠牲にしたくもない。そこで、ワーケーションを初めて実施しました」
1週間の滞在中、仕事をしたのは1日。その日は一室にこもり、会社用のパソコンを朝9時に立ち上げて業務を開始した。「ネット環境が心配でしたが、クラウド上にある社内ネットワークにも無事接続できました」。午前中はやり残した仕事をこなし、午後はテレビ会議システムを使って会議に参加。
「後ろに日本人形が飾ってあるね」という会話から始まり、不都合なく会議もこなせたという。そして夕方6時に仕事を終えて家族と夕食。「夫の会社は導入していないのでうらやましがられた」と話してくれた。
「どこでも仕事ができるという安心感が得られました。ワーケーションは私にとっての精神安定剤です」