リモートワークが普及したことで、これまでのメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へ――。という論調が強くなってきました。しかし、そんなに簡単に変われるのでしょうか。日本企業が抱える大きな課題とは。
スタイリッシュなオフィスで会議をする人たち
※写真はイメージです(写真=iStock.com/kokouu)

日本でプロのマーケターが育たない理由

こんにちは、桶谷功です。

最近いろいろなメディアで、「コロナの影響でリモートワークが当たり前になると、ジョブ型雇用が進むだろう」という意見を見かけます。しかしそのたびに私は、「そう簡単にはいかないのでは?」と思ってしまうのです。今回はその理由についてお話しすることにしましょう。

その前に、「ジョブ型雇用」について確認しておきましょう。

「ジョブ型雇用」とは、企業が社員を雇うにあたり、仕事(ジョブ)にふさわしい知識やスキルを持った人材を選ぶ(もしくは育てる)というやり方です。

それに対して過去の日本企業では、まず人を雇ってから、その人に適当な仕事を振っていく「メンバーシップ型雇用」が主流でしたし、いまもそうではないでしょうか。

しかしいまはコロナの影響で、社員にリモートワークを導入する企業が増えています。会社からすれば、ジョブ型は、「どこからどこまでがその人の仕事なのか」「何をもって仕事の成果とするか」が明確なので、リモートワークでも管理がしやすい。したがって、今後はジョブ型が主流になるだろうと言われているのです。

では、私の専門であるマーケティングという仕事は、ジョブ型とメンバーシップ型のどちらがふさわしいのか。マーケティングにはやはりプロフェッショナルのスキルが必要ですから、前者のほうがふさわしいと言えます。

しかし言うまでもなく、現状はそうなっていません。日本企業では部署異動がつきものですから、社歴は長くても「マーケティング部門に来てまだ数カ月です」という人もいれば、マーケティングという仕事がようやくわかってきたところに、「また営業に戻ります」という人もいる。つまり、プロのマーケターが育ちにくいのです。