人に癒やされ、地方創生に目覚める

実際の様子はどうなのだろう。参加経験のあるシステムエンジニアの2人に話を聞いた。事前の視察の報告を聞いて興味を持ったという西沢和泉さんはこれまでに6回参加。

データセンターサービス本部 運用品質管理部 上級システムエンジニア NRI認定ITサービスマネージャ 西沢和泉さん
データセンターサービス本部 運用品質管理部 上級システムエンジニア NRI認定ITサービスマネージャ 西沢和泉さん

「オフィスから遠く離れることで、ふだんから不必要な会議に出すぎていないか、チームメンバーに仕事をもっと任せられるのではないか……と、仕事の時間の使い道を見直すきっかけになりました」

業務日のアフターファイブは、いつもは接点のない部署のメンバーと買い出しに行って食事をつくったり、地元の祭りに参加したりなど楽しみは尽きない。何より「業務時間の合間に行うボランティア活動は刺激的」だという。これまでも、市役所の人たちを対象にペーパーレス化による業務効率化の勉強会を開いたり、地元の学校で情報システムの基礎を教えたりするなど、自社の強みを生かした活動を数多く実施してきた。そうすることで地元の人たちとの触れ合いも生まれる。

「山間部の小学校で開いた特別授業では、地元の方々が応援に来て子どもたちと一緒に真剣に授業を聞いてくれて感動しました。三好に行くと常にその調子で、人の温かさに癒やされる。人と人とのつながりについて深く考えるようになりました」

業務のかたわら、社内誌でテレワークの紹介に努めてきた金野尾景子さんは、次なる働き方を自ら実践して広めようと19年11月に初参加。

資産運用ソリューション事業本部 資産運用サービス開発第三部 副主任 システムエンジニア 金野尾景子さん
資産運用ソリューション事業本部 資産運用サービス開発第三部 副主任 システムエンジニア 金野尾景子さん

「仕事は通常どおりですが、外の環境が全く違います。少し足をのばせばリフレッシュできるすばらしい景勝地も数多くあり、そんな場所で暮らすように仕事をするのはとても新鮮でした」とキャンプの魅力を語る。最大の収穫は「自分にも社会貢献できると気づけたこと」だという。

「福祉サービスを提供する地元団体とのITを使った業務改善の検討会に参加する機会がありました。そのとき、システム開発しかできないと思っていた私にも地方課題の解決のお手伝いができるとわかった。地方創生に関心が湧き、東京に戻ってから、地域づくりのノウハウを学べる社外のセミナーや勉強会に参加するようになったのです」

福元さんの「いつもと違う環境に身を置くことで何かを変えるきっかけになる。それがキャンプの大きなメリットです」という言葉を2人が見事に体現していた。

田澤由利(たざわ・ゆり)
テレワークマネジメント 社長
シャープに勤務後、夫の転勤で北海道へ。その際に仕事をやめざるをえなかった経験から、柔軟な働き方を広めるべく起業。テレワークの普及に努める。著書に『在宅勤務が会社を救う』(東洋経済新報社)。

撮影=冨田寿一郎 イラスト=長野ともこ

安井 洋子(やすい・ようこ)