チェックポイントは「ふだんと比べてどうか」

では上司が部下の不調に、早く気づくには、どうしたらよいのでしょうか。そのポイントは、部下が「ふだんと比べてどうか」ということ。

上司がその部下を見て、ふだんと比べて明らかにおかしいところがある。それも1日2日ではなく、2週間ぐらい続いている……。このように異変が「継続」しているかどうかを見ていくことが重要です。

またメンタルの不調の出方には、次のような順番があります。身近にいる上司が早い段階で気づくことで、重症化を防ぐことができます。

①体の不調
②行動の不調
③精神的な不調

「①体の不調」として、よくあるのが頭痛やめまい、耳鳴り、腹痛など。「出社するとおなかが痛くなる」といった症状は明らかにこれに該当します。また周りから見てわかるものに、肌あれや脱毛があります。なかなか指摘しづらいですが、ここで気づいてあげられると、早期発見、早期解決につながります。

「②行動の不調」は上司としては、いちばんに気づいてほしいポイント。遅刻や欠席が増えていないか、業務の能率が下がっていないか、そういったところから発見できます。

ただし、テレワーク中は遅刻や欠席がチェックできないので、ある程度、業務内容で行動を評価することになります。

たとえば頼んだことを忘れるとか、注意が散漫なりミスが増えるといったことです。

最後に起こるのは「③精神的な不調」です。やたら落ち込んでいる、明らかにやる気が見えない……、誰が見てもわかる不調です。

精神的な不調が起こると、感情の起伏が激しくなるので、急に泣いたり、急に怒ったり、ふだんはそんな人じゃないのに、ということが噴出しますので、上司はおかしいと感じたらすぐに医療機関につなぎましょう。

1対1のランチでふだんの様子をウォッチ

上司が部下の不調を見抜けるかどうかは、ふだんの部下の様子を知っているかどうかにかかっています。ですから上司は、ふだんから積極的に部下の状態を知る機会を増やすことが大切です。

できれば出社したときに、1対1でランチをする。ディナーだとお互いに時間がとられるので、15分ぐらいのランチがベターです。

食事をしながら、仕事の話というよりもプライベートの話を聞いて、部下の表情や様子をしっかりと観察しましょう。

もし悩みを抱えているなら、しっかり聞く。月に1回ぐらいは、そういった機会を設ければ、変化の早期発見に役立つはずです。

構成=池田純子 写真=iStock.com

井上 智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医

産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。