【悩み4】オンライン会議でコミュニケーションが悪化

会議をオンラインに切り替えたところ、かえってコミュニケーションが悪くなり、ミスや手戻りが頻発するようになりました。会議のやり方が悪いのでしょうか。それとも、他のツールを使ったほうがよいのでしょうか。

【解決策1】そのままオンライン化してはいけない

ご質問にお答えする前にお聞きしたいことがあります。今までやってきたことをそのままオンラインに置き換えようとしていませんか。

堀 公俊『オンライン会議の教科書』(朝日新聞出版)
堀 公俊『オンライン会議の教科書』(朝日新聞出版)

私たち日本のサラリーマンは、職場の仲間と長時間一緒にいることで情報や思いを共有してきました。それがチーム力の源泉でもありました。

ところが、働き方改革とコロナ禍により、時間と場所を濃密に共有することが許されなくなってしまいました。密度の濃い関わりが苦手な人もどんどん増えています。かつてのようなコミュニケーションの取り方はもはやできないのです。

かといって、オンラインのツールにすべてを肩代わりさせるのは荷が重すぎます。リアルとオンラインとでは情報量や心理的効果に大きな差があるからです。もともと、日本の組織風土を前提につくられたものでもなく、過剰な期待は禁物です。

もはや時計の針を戻すことはできません。私たちがすべきことは、自分達の考え方を変えることです。オンラインを活用して、濃密な人間関係や非公式のコミュニケーションに頼りすぎない、新たなチームづくりをすることです。まずはそのことをしっかりと理解する必要があります。

【解決策2】オンライン化に乗じて仕事を変革する

「オンライン時代にどのようにチームの結束を図るか?」は喫緊の課題です。答えは誰も教えてくれず、自分達で見つけ出さないといけません。そのヒントはいろいろお話ししたつもりです。それができて初めて、「ビジネスツールをどのように活用していくか?」を考えられるようになります。

オンライン会議は万能薬でも魔法の杖でもありません。それは他のビジネスツールも同じです。できること/できないこと、得意なこと/不得意なことがあります。リアルな場でしかできないことも、まだたくさんあります。

私たちにできるのは、それぞれの持ち味を引き出すやり方を見つけることです。上手に組み合わせて相乗効果を発揮させるノウハウを培うことです。そうやって、新しい時代にふさわしいコミュニケーションのやり方を、自らつくっていかなければなりません。

お悩みに対する決定打はないかもしれません。でも、有効打はいろいろ考えられるはずです。できない理由を挙げるより、できることを考えるほうがよほど生産的です。

オンライン化の波に抗うことはできません。私たちに求められているのは、波の力を活かして仕事や組織を変革することです。そのためにオンライン会議を活用してもらえれば嬉しいです。

写真=iStock.com

堀 公俊(ほり・きみとし)
堀公俊事務所代表/組織コンサルタント

神戸市生まれ。大阪大学大学院工学研究科修了。大手精密機器メーカーにて商品開発や経営企画に従事。2003年「日本ファシリテーション協会」を設立。関西大学、法政大学、近畿大学で非常勤講師を務める。現在、堀公俊事務所代表、組織コンサルタント、日本ファシリテーション協会フェロー。