なぜクラウドファンディングか

先行して、6月1日からクラウドファンディングでプロジェクトを開始した。

この製品は今までやってきた美容の枠を超えた、世界共通の女性の悩みを解決するものだ。また、SDGsのジェンダーレスおよび環境にやさしいという観点からも、この世に必要な製品だろうと考えた。だからこそ、一般的な販売方法ではなく、多くの人に知ってもらうためにクラウドファンディングにチャレンジしたというわけだ。

そうした経緯もあり、クラウドファンディングの目標はたった100万円だった。ここで売り上げを立てたいと考えていたわけではなかったからだ。しかし、あれよあれよと寄付額は膨らみ、スタートからわずか3日で1200万円を達成。1カ月半後のプロジェクト終了時には、なんと1億241万円、9000人を超える支援者の寄付が集まったのだ。

このクラウドファンディングを通じて、このショーツに共感して寄付をした人々のさまざまな声から、思わぬニーズが集まった。たとえば発達障害のある娘を持つ親からの声だ。

「娘が発達障害でナプキンを交換するのを理解できず、このショーツを履かせたい」
「子どもの支援学校での先生は男性。生理の時に男性に分からないようにしてあげたい」

この商品を求める女性は、自分たちが想定している以上に幅広く存在している。そして、もっとそのニーズに応えたい――。

いずれ、ナプキンがいらない時代が来る

集まった1億円余りの資金の使い道として、まずは医療従事者にベアシグネチャーショーツを寄贈する。新型コロナウイルス感染症の影響で、医療従事者である女性たちは過酷な状況にさらされているからだ。

その一方で、新しい商品の開発に役立てる。

「まずは少女サイズのショーツです。周期が安定しない10代の女子にも、生理を意識せずに過ごす快適さを届けたいと考えています。もう一つが、服に響かないTバックタイプです。日本の高品質な製品づくりを世界に届けたいと考えています」

ベアシグネチャーショーツは、海外販売にも今後力を入れていく。「日本発」の素晴らしい製品を世に広めていきたいからだ。

「いずれナプキンがいらない時代が来ます」

山本さんは力強くそう語る。地球環境のためにも、ライバルが増えて市場が盛り上がることを期待しているという。

いつの日か二人で――。

海外から日本を眺めていた二人の少女の夢が、長い時を経て、日本で花開いた。若いころに抱いた高い志が羅針盤となり、自らをその地まで導いたのだった。

構成=藍羽笑生

山本 未奈子(やまもと・みなこ)
MNC New York/Bé-A Japan 代表取締役 CEO

ニューヨーク州認定ビューティーセラピスト/英国ITEC認定国際ビューティースペシャリスト。1975年生まれ。12歳から大学卒業までをイギリスで過ごす。UCL(ロンドン大学)を卒業後、帰国し、商社と外資系証券会社に勤務。32歳の時ニューヨークの美容学校L’atelier Esthetiqueへ入学し、首席で卒業。同校で教鞭を執るまでに。その後拠点を日本に移し、2009年にMNC New York Inc.を設立。「日本で一番女性を幸せにする会社」をビジョンに掲げ、ビューティーブランド「SIMPLISSE/シンプリス」、ファッションブランド「CALLi/キャリー」、ヘアアクセサリー事業、スパ事業の運営など多数の事業を展開する。また美容の専門家としても美容記事の監修やセミナー、イベントでの講演など多方面で活躍中。著書多数。現在は社長業、美容家業の他、3児(長女16歳・長男8歳・次女6歳)の母としても奮闘中。

高橋 くみ(たかはし・くみ)
MNC New York 取締役 COO Bé-A Japan 代表取締役 COO

UCL(ロンドン大学)卒業後、外資系映画会社、外資系アパレル会社を経て、2009年に山本未奈子と共にMNC New York株式会社を設立。家族と住むアメリカ・ロサンゼルスを行き来しながら、1年のおよそ半分を日本で過ごす。共同経営者の山本同様、シングルマザーに育てられたこともあり「ジェンダー平等」と「女性のエンパワーメント」には人一倍の関心と持論を持つ。フェムテック商品「超吸収型生理ショーツ Bé-A/ベア」のコンセプター。