コロナ禍をきっかけに、困窮のため生理用品を買うことができない「生理の貧困」に、世界的に注目が集まっています。フランスでは2021年2月、政府が全国の学校で生理用品を無償配布することを決めました。フランス在住のジャーナリスト、プラド夏樹さんによると、この動きの背景には、何年も前から続く市民団体や学生の活動や、国民の理解があるといいます――。
Règles Élémentairesは、フランスで初めて生理の貧困に取り組み始めた市民団体。手前の赤い箱で、新品の生理用品の寄付を募っている
©Règles Élémentaires
Règles Élémentairesは、フランスで初めて生理の貧困に取り組み始めた市民団体。手前の赤い箱で、新品の生理用品の寄付を募っている

3分の1の学生が生理用品購入に「金銭的支援が必要」

フランス政府は昨年2020年末、ホームレス女性や刑務所にいる女性を対象に、生理用品を無償とすることを発表。さらに今年2月末には、全国の学生にも無償で配布すると発表した。全国レベルでのこうした取り組みは、2018年に小学校から大学までを対象に無償化したスコットランドに次いでのことだ。ちなみにスコットランドでは2020年11月、年間2700万ユーロ(日本円で約34億円)の予算で、全ての女性に生理用品を無償で提供することが議会で可決された。

日本同様、フランスでも、コロナ禍で学生の貧困が深刻化している。遠隔授業に対応するためのパソコン周辺機器の出費が増えた上に、アルバイト収入が激減したからだ。OVE(フランス国立学生生活監査局)の調べでは、コロナ禍以前、40%の学生がアルバイトをして生活費に充てていたが、2020年3月のロックダウン以降、学生1人当たりの収入は月平均で274ユーロ減っている。

こうした状況下では、ただでさえ口にしにくい「生理の貧困」(困窮し、生理用品を買うお金がなくなること)は、ますます深刻になっているのではないだろうか。日本で生理に関する啓発運動をしている若者グループ「#みんなの生理」が日本の高校生以上の女子を対象に行った調査によると、約2割が生理用品を買うのに苦労しており、そのために生理で学校を休むなど生活に支障が出たという人も5割いた。

私が暮らすフランスで、今年2月に発表された調査結果(ポワチエ市学生団体と全国助産婦学生団体調べ)によると、学生の3分の1が、生理用品の購入に金銭的サポートが必要だとしている。2月23日、フレデリック・ヴィダル高等教育・研究・イノヴェーション大臣は「生理の貧困は国民全員の尊厳、連帯、健康にかかわる問題。2021年に、『食事を抜くか生理用品を買うか』の選択を迫られる女性がいることを、私たちの社会は受け入れられません」とし、今後、学生を対象に無償化することを発表した。

次の週から大学寮、大学の健康課では生理用品の無償配布機の設置が進められた。9月までには全国全ての大学に1500台設置される予定だ。大臣は「環境に優しい製品」とbio製品(日本で言うオーガニック製品)であることも強調した。