1993年から当選を重ね、国会議員を務めてきた塩崎恭久さんは、2021年10月に議員を引退。里親になる準備をしているという。ジャーナリストの大門小百合さんが塩崎さんに、里親になろうと考えた理由について聞いた――。

年齢制限がないなら「やろう」

塩崎恭久さん(写真=筆者撮影)
塩崎恭久さん(写真=筆者撮影)

官房長官や厚生労働大臣を歴任した前衆議院議員の塩崎恭久さんは、現在71歳。2人の息子は既に独立し、長男は父の跡を継いで衆議院議員になった。昨年28年間にわたる国会議員生活に幕を下ろし、今後は悠々自適の生活かと思いきや、昨年10月に里親になるための3回の研修を受けた。順調にいけば、春にも里親候補として認定される予定だ。

里親は、虐待や経済的な理由など、さまざまな事情で実の親と一緒に住むことができない子どもたちを自宅に迎え入れ、一定期間一緒に暮らす制度だ。塩崎さんは議員時代、こうした、親と暮らせない子どもたちの「児童養護」の問題に関心を持ち、厚労大臣としても、関連の法整備を進めてきた。

議員を辞める前、塩崎さんは、愛媛県の児童相談所に行き、里親の年齢制限について聞いたそうだ。「年齢制限はないというから、『じゃあ、僕でもできるじゃないか』と言ったら、もちろんできますというので、じゃあやろうと。女房にも聞いたら、『いいわよ』と言ってくれた」と言う。

親と暮らせない子どもは3万人

日本には、親の虐待や貧困、親の病気や死亡などの理由で、親や親せきと暮らすことができず、施設や里親家庭で生活する子どもが3万人以上いる。特に増えているのが、親の虐待だ。

児童虐待で、塩崎さんの心に強く残っている事件が2つある。2018年、東京都目黒区に香川県から引っ越してきた5歳の女の子、船戸結愛ゆあちゃんが、親からの虐待で死亡した事件。そして、2019年千葉県野田市で小学4年生の栗原心愛みあさん(当時10歳)が父親に虐待を受けた末、死亡した事件である。

目黒の事件は、結愛ちゃんが、「もうお願い ゆるしてくださいおねがいします」と両親に許しを請う手紙がマスコミで公開され、大きな反響を呼んだのを覚えている人も多いだろう。また、心愛ちゃんは、学校で行われたアンケートに「お父さんにぼう力を受けています」と回答したが、後にこのアンケートのコピーを野田市教育委員会が父親に渡していたことも明らかになった。

「こんな手紙を、二度と子どもに書かせてはいけない」と、塩崎さんは、「児童の養護と未来を考える議員連盟」の代表として、そして厚労大臣として法整備に努めてきた。