里親の“地域格差”

里親委託率も地域によって差がある。国からは自治体に対し、里親のリクルートや登録、研修や活動を支援する交付金制度があるが、熱心な自治体とそうではない自治体があり、補助金の申請額にもバラつきがある。

全国で里親委託率が一番高いのは、新潟市の58.3%(2021年3月末現在)。一番低い宮崎県は10.6%で、新潟市の5分の1以下だ。この違いは、自治体の取り組み姿勢のほか、里親経験者で作る里親会の熱心な活動やNPOのサポートが影響しているという。

すでにいくつかのNPOが自治体からの委託を受け、里親のリクルートや里親支援などの事業を行っている。これから里親を増やすためには、専門知識を持った民間の協力が欠かせないと塩崎さんはいう。

「NPOなどの民間の力を借りて、どんどん里親事業を推進してもらうことが必要だ。里親を経験した人がNPOなどで里親の支援をするといった、広がりも出てくると思う」

最近、塩崎さんは、千葉県で20年近く里親として子どもを育て、今も子どもを6人預かっている女性から話を聞く機会があったという。

彼女は現在、福島県の農家と組んで、農家の人に里親になってもらおうという取り組みを進めている。農家からの反応もよいそうだ。

「子どもたちも、いろいろ学べていいんじゃないかと思います。彼女からは、『(塩崎さんの地元の)愛媛県のみかん農家と組んで里親を広げたらいいんじゃないですか』と言われた。僕も、知っているみかん農家に里親を勧めてみようと思っている」

大門 小百合(だいもん・さゆり)
ジャーナリスト、元ジャパンタイムズ執行役員・論説委員

上智大学外国語学部卒業後、1991年ジャパンタイムズ入社。政治、経済担当の記者を経て、2006年より報道部長。2013年より執行役員。同10月には同社117年の歴史で女性として初めての編集最高責任者となる。2000年、ニーマン特別研究員として米・ハーバード大学でジャーナリズム、アメリカ政治を研究。2005年、キングファイサル研究所研究員としてサウジアラビアのリヤドに滞在し、現地の女性たちについて取材、研究する。著書に『The Japan Times報道デスク発グローバル社会を生きる女性のための情報力』(ジャパンタイムズ)、国際情勢解説者である田中宇との共著『ハーバード大学で語られる世界戦略』(光文社)など。