工場からの門前払いにもめげず

下着メーカーをはじめ、さまざまな生産工場に企画を持ち込んだ。当初20社くらい連絡したものの、そのうち半分は返事すら帰ってこなかった。門前払いである。

技術的に作れないことやコストに見合わないことから断られることもあった。また、「生理を吸収したものを履き続けるなんて日本に合わない。そんなものが本当に売れるのか」とコンセプト自体を否定されてしまうことも多かったという。下着メーカーの場合は、吸収量の点がどうしても解決できず、生産には至らなかった。

それでも絶対に売れる――二人は確信していた。

企画から半年余りがたったころだった。ある工場が受注生産のOKの返事をくれた。ついに、企画を理解してくれる生産工場が見つかったのだ。そこで、あれもこれもとお願いしたら、「そこまではできない」とお断りされてしまった。

吸収型下着は、普通の洋服の3倍の工程がかかるという。5層にまたがる吸収体を作るだけで、普通のショーツの5倍の工程がかかってしまう。機能を増やせば増やすほど、工程はどんどん煩雑化していくため、メーカーの負担は非常に大きくなるのだ。

それでも、山本さんたちは「女性のためのイノベーションを起こしたいんです」と食い下がった。工場側が理解を示し、一からプロジェクトを仕切りなおした。

他の人が作れるものを作る必要はない

開発で大変だったのは、吸収量の確保と、耐久性だ。1日の吸収量として、水分120mlが必要と仮定し、さらに100回洗っても吸収力を維持できることを目指した。一度は一体型の試作品を作ったが、どうも洗いにくい。洗いやすさを考えて、パンツ一体型ながらパーツを2つに分けた。

超吸収型生理ショーツ Bé-A《ベア》シグネチャーショーツ(写真=MNC New York提供)
超吸収型生理ショーツ Bé-A《ベア》シグネチャーショーツ(写真=MNC New York提供)

山本さんのこだわりとして、お腹を冷やさないため、「テラヘルツ波」を放出するテラヘルツ鉱石をパウダー化し、お腹を覆う部分にプリントした。「吸収量・耐久性・保温性の3つの機能をそろえて出さないとイノベーションは起きない。他の人にも作れるものを私たちが作る必要はないからです」と山本さんは言い切る。

自分たちの理想とする製品を作るためには、一般的に販売されている生理用ショーツの何倍もの工程が必要だ。試作品を作るたびに試すのだが、生理が来るのは月に1度。試せる人数も限られており、なかなかデータが取れない。改良にも時間がかかった。

それでもようやく製品化にこぎつけ、2020年7月30日に「超吸収型生理ショーツ Bé-A《ベア》シグネチャーショーツ」を公式サイトにて販売することになった。

定価は6900円(税別)で、生理用ショーツだと考えれば非常に高額だ。その金額で生理用ナプキンの代用となるからには、製品の品質の立証が必須だと考え、吸収量と耐久性について公的機関で審査し、実証結果を得た。安価とはいいがたい商品だからこそ、徹底的に品質にこだわり、長く使ってもらいたいという姿勢を表したかった。