【日本酒編】メリハリをつけて楽しませる
Q.大吟醸が蔵の最上級のお酒ですか?
A.実は、大吟醸と名乗らないお酒もあります。
大吟醸は日本酒の華。とっておきの席で封を開けるような、特別なイメージをもつ人が多いのでは。日本酒と発酵フレンチのペアリングを提案する簗塲友何里さんのお店でも、「接待の予約では、幹事さんから『大吟醸メイン』の要望が入ることがよくあります」とのこと。
「原料のお米を50%以上も磨いて造るわけですから、品質、値段ともに最上級クラスであることに違いありません。香りが華やかで、ラベルやボトルデザインに高級感があるタイプが多いことも、セレブ感を上げる理由かもしれませんね」
とはいえ、「“大吟醸ファースト”感は、全体的に以前ほど強くなくなっている」という。
「たとえば、若手のスター杜氏によるマニアックな限定品だったり、『愛山』のように高価で希少性の高い酒米で造っていたり。富士山の湧き水仕込み、特定の田んぼで栽培された有機米仕込みといったように、お酒がもつストーリーに注目が集まる傾向も。もちろん、飲んでおいしいことが大前提ですが、上質感の切り口が多様になっているのを感じます。精米歩合50%で造りながら、あえて純米吟醸を名乗る“隠れ大吟醸”もあるんですよ(笑)」
つまり、日本酒のバリエーションが広がり、ハレの日本酒の選択肢が増えてきているということ。“大吟醸”のブランドに捉われず、一歩先を行くプレミアム感に注目したい。
Q.“生酛”や“山廃”はクセが強い印象がありますが……。
A.ワイン好きにも好まれる味わいです。
“生酛”“山廃”といえば、通が好む古典的な日本酒。初心者にはハードルが高そう、という声もよく聞く。でも、恐れるには足らず!
「むしろワインをよく飲む方、特にナチュラルワイン党は、生酛・山廃好きが多いですね。ほかの日本酒にはない独特の酸が、新鮮に感じられるからでしょうか」。
味わいの特徴は、“酒母”と呼ばれる発酵のスタート工程で、乳酸を人工的に加えず、自然の乳酸菌を生成させる技法によって生まれるもの。乳酸菌が繁殖しやすい環境に近づけるため、米や麹をすりつぶして溶かすのが「生酛仕込み」、“山卸”と呼ばれるすりつぶし作業を省くのが「山廃仕込み」。手間と時間、熟練のコントロールを要する、昔ながらの製法である。
「でも、長時間の乳酸発酵で備わるコクと力強い酸は、生酛・山廃ならではの個性です」
最近は、精米歩合を高めたり、低温発酵できれいな旨味と酸を表現するモダン型生酛・山廃のバリエーションも増えているそう。
「初めての方はキレイ系から入って、より濃醇でどっしりしたタイプにシフトしていくのがいいかもしれませんね。先入観は抜きにして、まず飲んでみてください。新しい世界が必らず開けますから」