肉料理なら、ボルドーの赤ワイン

Q.ワインリストを見ても選べません。
A.迷ったら“ボルドーの赤ワイン”を。

事前にレストランと打ち合わせができなかった場合、ワインリストを見て注文するのは、至難の業。ある程度の知識や経験がないと、いくらリストを眺めていても、選べないはずだ。ここで情野さんから必殺技を伝授! 「肉料理なら、ボルドーの赤ワインを注文すれば、ほぼ間違いありません」。その理由は、ワインの味わいにあった。

レストランで人気のある赤ワインの産地は、フランスのブルゴーニュやボルドー、アメリカのカリフォルニアなどだ。それぞれの特徴は、ブルゴーニュは酸味のある繊細な味、カリフォルニアはパワフルで濃厚。接待の場では、ワインを飲み慣れていない人もいるので、「万人に好まれる、味のバランスのいいボルドーがおすすめです」。

しかもボルドーは長熟タイプで、レストランでは10年以上も熟成させているという。時とともに“おり”がたまるため、グラスに入らないようにサーブする前にデキャンタに移して澱を除く“デキャンタージュ”という儀式を行うのだ。「ソムリエが目の前でデキャンタージュする姿は、レストランでしか見ることができません。特別感が演出されて会話が弾み、まさに接待向きのワインといえますね」

2006 シャトー・フィジャック サン・テミリオン/2005 シャトー・モンローズ サン・テステフ/2006 シャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランド
Q.テイスティングは、誰がするのでしょうか?
A.ホストの役目です。

ボトルワインを注文すると、必ずソムリエからテイスティング(試飲)を求められる。プライベートの席ならワイン好きが喜んでする場面だが、接待時は“ホスト”の役目になる。ワインの知識がないのにと思われるが、「ひと口味わってから“お願いします”と伝えていただければ大丈夫ですよ」。ドラマで見るような、味のコメントや感想を述べる必要はないので安心だ。

すべてのグラスにワインが注がれたら、「料理もそうですが、ワインもクライアントが飲むまで待つ、がマナーです」。

ちなみに接待される側のマナーとして、“おいしい”や“好み”などのコメントを、ソムリエではなくホストに伝えよう。その言葉を受けて、ソムリエがワインの説明をし、会話を盛り上げてくれるのだそう。

Q.最低限、身につけたいワインの知識は何ですか?
A.5つの品種の特徴を覚えましょう。

“ワイン”と聞くと、“難しい”“わからない”という人が多いと思うが、最初の一歩はブドウ。5つの品種を覚えれば、大まかにワインの味を分類できると情野さんは言う。その5つとは、白ワイン品種のシャルドネとソーヴィニヨン・ブラン、赤ワイン品種のピノ・ノワール、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨンである。それぞれの味わいは表を参考に。

赤ワインのブドウ品種/白ワインのブドウ品種

さっぱりした白ワインが好みの人には、ソーヴィニヨン・ブランがおすすめ。逆に重厚感のある赤ワインならカベルネ・ソーヴィニヨンになる。産地や造りによって味はさまざまだが、品種の個性を覚えることで、自分の好みも伝えやすくなり、イメージ通りのワインに出合える。「接待では難しいですが、同じ品種を国や、造り手別で飲み比べるのも、ワインの楽しさの1つですよ」

APICIUS(アピシウス)
☎03-3214-1361 東京都千代田区有楽町1-9-4 蚕糸会館B1F
営/11:30~14:00(L.O.)、17:30~21:00(L.O.)
休/日曜 交/JR「有楽町駅」から徒歩3分ほか
情野 博之(せいの・ひろゆき)
APICIUS シェフソムリエ
2007年よりフランス料理店「アピシウス」のシェフソムリエに。2019年「ゴ・エ・ミヨ ジャポン」のベストソムリエ賞に選出。女子栄養大学の非常勤講師としても活躍。

文=石出和香子