成果の出ない社員を副業人材に置き換える時代へ

一方、企業側もウィズコロナを前提に日立製作所、富士通をはじめリモートワーク中心の働き方に転換する大手企業も増えている。リモートワークという自由度の高い働き方を認めるということは、当然、副業にも寛容にならざるをえない。結果的に「リモート+副業」という働き方が今後普及していくだろう。その典型はこの10月からリモートワークを恒久化するヤフーだ。すでに副業を容認しているが、新たに7月15日、同社で副業として働く人材約100人の募集を開始した。

そうなると今後、働き方だけではなく、収入も大きく変化するだろう。直近では多くの企業で夏のボーナスは大幅減となった。また、冬のボーナスや来年夏のボーナスはリーマン・ショック時以来の記録的な減少になると見るエコノミストも多い。加えて、緊急事態宣言下を含むリモートワークを反映し、残業代も減少しているが、今後も給与の補てんとしての残業代は期待できない時代になる。

さらに言えば、リモートワーク中心の自由度の高い働き方を認めるということは、結果的に「目に見える成果」に応じて給与を支払うことであり、従来型の年功的賃金体系は消失していくだろう。同時に「成果を出せない」人は会社から退出を迫られるという「雇用の柔軟化」も益々進行するだろう。たとえばヤフーが新たに募集する副業人材は「業務委託契約」での働き方になる。多くの企業が副業人材を採用するようになると、中には成果の出せない社員を副業人材に置き換えるという動きが出てきてもおかしくはない。

ビジネスパーソンにとっては否が応でも「キャリアの自立」が求められる時代に突入する。

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溝上 憲文(みぞうえ・のりふみ)
人事ジャーナリスト

1958年、鹿児島県生まれ。明治大学卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て、独立。経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。著書に『人事部はここを見ている!』など。