副業容認企業は4割近くに

ではどのくらいの企業が副業を容認しているのか。経済同友会の「ダイバーシティと働き方に関するアンケート調査結果(2019年11月6日~12月8日調査、168社)によると容認企業は38.7%。2016年は17.7%にすぎなかったが着実に増えている。また、「認めていないが、認めることを検討している」企業が26.2%もある。サンプル数の多いリクルートキャリアの「兼業・副業に対する企業の意識調査」(2019年9月2日~9月5日、3514社)では副業を推進・容認している企業は30.9%。前年の2018年の28.8%より、2.8ポイント上昇している。

なぜ推進・容認をしているのか。最も多いのは「社員の収入増につながるため」の40.8%。次いで「特に禁止する理由がないから」が40.7%となっている(複数回答)。一方、「人材育成・本人のスキル向上につながるため」が前年の6.2ポイント増の30.4%、「社員の離職防止(定着率の向上、継続雇用)につながるため」が5.3ポイント増の27.6%になっている。この2つは経済同友会の調査では最も高く「人材育成・スキル向上につながるため」が57.4%、「優秀な人材の流出防止」が54.1%となっている。

つまり、副業が社員のスキル向上やキャリア形成に役立つとともに、副業希望者が多いことを踏まえ、離職防止や人材の定着に効果があると考える企業が増えているということだ。実際に一部上場の建設関連会社の人事部長は「政府も副業・兼業を推進しており、今後容認していく企業が徐々に増えるだろう。働き方改革の一環として、社内の公平適正なルールを決めて、自社で責任を持って運用可能であれば認めてもよいと思う。その際にはさまざまなリスクも考えられるので同意事項について誓約書を提出してもらうなどの十分な対策も必要」と、前向きな姿勢を見せている。

副業NG企業の「認めない理由」3つ

しかし、いまだに「認めておらず、検討もしていない」企業が35.1%もある(経済同友会調査)。なぜ認めようとしないのか。大きな理由は以下の3つだ。

①(兼業・副業先との)労働時間通算が困難となるため(74.1%)
②社員の長時間労働の助長につながるため(72.4%)
③(兼業・副業先等での)労働災害への懸念があるため(50.0%)

こうした懸念は当然だろう。副業することで長時間労働による健康被害は政府内の会議でも指摘されていた。①については、労働基準法では2社で雇用される場合、労働時間が通算される。仮に副業先との労働時間の合計が法律の上限(月80時間、年間720時間等)を超えると、本業の企業責任が問われる。また、法定労働時間の1日8時間、週40時間を超えると、割増賃金を支払う必要がある。本業の終業後に副業する場合、法的には副業先の負担が大きくなるという問題も抱えている。