社長の武田は、オートウェアの広まりに自信を見せる。
「オートウェアを敵だと思っている人はいないと思います。オートウェアの使えるところは全部使った上で、本当に勝負したい技術だけを自分たちで作ればいい。ソフトウェアとしてのオートウェアを、誰もなくしたいとは思っていないと思います」
ソフトバンクの下で伸びるベンチャー企業
2019年10月、北海道の中央にそびえる大雪山の東山麓、上士幌町の公道で、自動運転の小型バスに乗客と貨物を乗せる貨客混載の実証実験が行われた。上士幌町は面積が696平方キロ。東京23区より広い。この広大な土地で公共交通を維持して行くため、上士幌町は自動運転バスの導入を目指している。2017年に実証実験を行って住民の理解を得た上で、翌2018年にはふるさと納税の仕組みを使って全国から寄付を募った。
その結果、同年4月から年末までの9カ月間で、約5300万円に上る寄付金が寄せられ、これをもとに様々な実験が行われている。一連の実験で車両の運行を担当しているのが、ソフトバンクの子会社である「SBドライブ」だ。現在は社名をBOLDLY(ボードリー)に変更している。
ボードリーは、ソフトバンクのベンチャービジネスコンテストで選ばれた佐治友基が社長を務める2016年4月に発足した会社である。
同社が最初に技術開発で取り組んだのが、自動運転バスの遠隔運行管理システム「Dispatcher」(以下、ディスパッチャー)だ。大型二輪免許を所有するスタッフが、バスと常時接続されたパソコンで運行を遠隔管理する。
「発車時の転倒事故」をなくすために
無人で自動運転するバスには、車内と車外に数多くのカメラが設置され、乗客の人数はもちろん、乗客が座っているのか立っているのか、ドアの開閉状況や走行中の道路状況などが、リアルタイムの映像で確認できる。バスの現在位置も地図上に表示される。スピードやエンジンの回転数など、走行中の車両に関する情報も把握できる。もし車内で何らかの異常が発生したときは、アラートが鳴り、管理者はボタンひとつでバスを停車させることができる。車内の乗客と電話で会話することも可能だ。