会社を大きくするより文化を広げたい
当時、日本企業にもエコの意識が高まりつつあった。そうした追い風もあり、「ロスフラワー」で作ったドライフラワーによる空間装飾の依頼が帰国後に次々に舞い込み、フラワーサイクリストとして河島さんは引っ張りだこになった。
そして2019年12月、ロスフラワーを利用し、サスティナブルな装花のプロモーション事業を行う会社として、RINを設立した。産地から直接、規格外の花や在庫過多になった花を卸値同様の価格で買い取り、ドライフラワーにして、空間装飾に使用。2020年初めに実施した資生堂グローバルイノベーションセンターの期間限定企画展「サステナブルビューティーガーデン」では、1万5000本もの花を使った。捨てられるはずだった花が、たくさんの人に見てもらい、生かされる。
RINは、フラワーサイクリストの「アンバサダー」とともに、発信や販売を行っている。河島さんは、会社の規模を追求する経営はしない考えだ。会社を大きくするより、文化を広げることに注力する。「日本で『花が好き』だという人は、人口全体の2割だそうです。まずはその2割に響けばいいと思っています」
今年はコロナの影響で、イベントや結婚式が中止になり、花が大量に廃棄される危機的な状況にあった。しかし、「私たちにとってはむしろ追い風になった。廃棄される花を救い、世の中に行きわたらせることができます」と河島さんは前向きだ。
「芸術・文化に対する日本の国家予算はフランスに比べてかなり少ないそうです。この金額からも、日本が文化に対するリソースを割いていないことがわかります。もっとクリエーティブへの理解を深めてもらいたい。まずはロスフラワーを買う文化を広めたいと思っています」
会社を大きくすることよりも、文化を変えることはさらに難しいことだ。これからも河島さんは、花のような笑顔で挑戦し続ける。
構成=藍羽笑生
文=藍羽 笑生
長野県生まれ。大自然の中で幼少期を過ごし自然を愛するようになる。東京家政大学服飾美術学科卒業。2017年 生花店での短期アルバイト時に、廃棄になる花の多さにショックをうけたことから、独学でドライフラワーづくりを学び、フラワーサイクリストとしての活動を始める。2018年クラウドファンディングで資金を集めパリへの花留学を実現し、2019年ロスフラワーを用いた店舗デザインや、装花装飾 を行う株式会社RIN を立ち上げる。2020年花農家と消費者の架け橋として開設したオンラインショップ『フラワーサイクルマルシェ』は、農林水産省HPでも紹介。instagram:@haruka.kawashima