クリスマスに大量に廃棄される花々

次第に、ワークショップだけでなく、ドライフラワーを使った空間装飾のオファーが来るようになり、花の見せ方や取り扱い方、給水用スポンジの使い方など、技術的なことももっと学ばなければいけないという意識が強くなった。

このころには、撮影アシスタントの仕事と並行して花に関わることができるような短期のアルバイトを始めた。花について、とにかくたくさんのことを現場で学びたかったからだ。

東京・青山で開催されるファーマーズマーケットの出店やフラワーショップの店員のバイトもやってみた。

印象的だったのは、クリスマスの花々だった。クリスマスには用意されていた大量のプロポーズ用の赤いバラが翌日には処分されてしまう。捨てられるのはもったいないという思いが強く残った。

そこで河島さんは一念発起。廃棄予定の花「ロスフラワー」で作ったドライフラワーを用いたブランド「Fun Fun Flower」を立ち上げることを決めた。

クラウドファンディングでフランス留学

花に関する知識と技術をもっと磨かなければと感じていた河島さんは、2018年1月末、花の勉強をするための渡仏資金を、クラウドファンディングで集めることに成功。3週間、フランスで花の文化を学ぶことができた。

フランス滞在は短いとはいえ、得たものは想像以上だった。まず、「朝にチーズとワインと花を買って帰るのが一般的」ということを知り、こうした豊かな文化を日本でも広めたいと思うようになった。

また創造性を非常に重視する文化があり、河島さんの「花について勉強して、これを仕事にしたい」という気持ちを話した時、だれもが当たり前に受け止めてくれた。

また、フランス人は、色彩感覚に非常に敏感なところがあることを知った。

ホームステイ先のホストファミリーは写真家と小説家の夫婦だった。アーティストの家庭だったこともあり、家の中にも美意識がそこかしこに表れていたが、こと色に関してはこだわりがあった。

滞在中に、河島さんは外で生花のアレンジメントのレッスンを受けたのち、その花を家に持って帰ってきていた。夫婦は河島さんが持ち帰った花を眺めては、「ピンクと白のコンビネーションがいいね」「あのサイドテーブルに置くと映える」「この絵の近くがいい」など、毎回鑑賞会を行った。

ある時、深紅ではないバラの一輪挿しを飾っておくと、夫人がそっと置き場所を変えていることに気づいた。理由を聞くと、「元気がない色だから、私は見たくないの」。

色へのこだわりを強く感じるとともに、色や環境も含めて、完成したものを慈しむフランスの文化を垣間見ることができた。