MBA留学ほど高額な費用を出すのは難しいし英語力もない、語学留学だけではない「何か」も学びたいという場合の選択肢には何があるのか。ジャーナリストの大門小百合さんは「デンマークには、フォルケホイスコーレという全寮制の学校が約70校あり、17.5歳以上なら誰でも入学できる。費用もリーズナブルで、最近は日本からの留学生も増えている」という――。
デンマークにあるノーフュンスホイスコーレ
撮影=大門小百合
デンマークにあるノーフュンスホイスコーレ

デンマークで日本人留学生が増加

円安が続き、海外留学にも手が届きにくくなっている。例えば、アメリカに留学する場合、生活費も入れると年間1000万円ぐらいは優にかかるし、MBA(経営学修士)を取得する場合は年間1000万円では利かず、年間1500万円~2000万円必要だとも聞く。

しかし、ユニークで比較的お金のかかからない留学先が、北欧デンマークにある。入学試験もなく、学期中のテストもない。17.5歳以上なら誰でも入学可能で、学生寮も完備されている。大学に行く前に勉強しに来るデンマーク人や、社会人になってから学びなおしたいとやってくる人もいて、中には70代、80代で入学する人もいるという。高齢者も若者も一緒に授業を受け、学生寮で生活を共にする学びの場が、「フォルケホイスコーレ(Folkehøjskole)」という国民高等学校だ。

フォルケホイスコーレはデンマークに約70校ある成人向けの全寮制の学校で、高校や大学とは異なるオルタナティブ教育機関として、デンマークの文部科学省から認可を受けている。それぞれ学校によって、陶芸、音楽、農業、スポーツ、心理学、福祉など学べるテーマは異なり、授業はワークショップと対話で進められる。プログラムは数週間から4カ月、半年などさまざまで、半年間の留学費用は、寮費込みで約90万円程度だ。デンマーク語ができなくても、英語で授業を受けられる学校がたくさんある。

日本からの留学生は増加傾向で、英語で授業を受けられるホイスコーレでは、日本人留学生数が2桁を超えるところも多い。ホイスコーレだけの数字ではないが、デンマークの日本大使館によると、日本人の「留学生・研究者・教員」の数は、2019年は約290名、2024年は約360名と増加傾向にあって、デンマーク自体が留学先として注目されているようだ。また、ここ数年、デンマークからの帰国者がフォルケホイスコーレのような教育の場を作るべく、各地で学校やワークショップを立ち上げているところにも、その人気がうかがえる。

「入学するために英語力を高めて準備し、高いお金をかけ、入学してからも落第しないよう必死で勉強して授業についていく」というMBA留学などとは違い、「一度仕事を離れて環境を変え、自分のキャリアをじっくり見直したい。それほど高いレベルの英語力がなくても入学でき、費用もリーズナブルなところで学びたい」といったタイプの留学にもマッチしている。