「まずは挑戦する」ことを決めた30代はじめ

建築設計本部へ配属された長塚さんは、工場などの生産施設を設計するグループへ。一般職として採用されたが、職場では総合職の男性社員と同じ仕事を任されるようになった。

建築設計においては工事着工までのスケジュール管理が大変で、どうしても変更があったり、仕様がなかなか決まらなかったりする状況で締め切りに向けて業務が増えていく。着工後も現場へ度々足を運び、工程が厳しい仕事では残業続きの日々だった。

入社6年目にはマンションを主に設計するハウジンググループへ異動。企画から携わることも多くなり、仕事は充実していたが、年次を経るにつれてやはり気がかりなことがあったという。

「総合職と昇進速度が違うことは理解していましたが、職務や業務量には差がなかったので、同期や後輩男性が先に昇進していくことは少し気になっていました。一方、建築設計本部でも総合職で採用される後輩女性が増えてくるなかで、立場の違いを感じることも……。ただ仕事はまったく変わらないので、自分の業務をきちんと進めていくことを心がけていました」

最初の転機が訪れたのは30代はじめのころ。一般職で入社した女性も総合職への登用試験を受けられることになったのだ。

しかし、その時は「正直なところ、自分も受けるかどうか悩みました」と振り返る。なぜなら総合職と変わらぬ業務をこなすことに自負はあったが、家族の将来なども考えると、仕事と両立していけるか不安を感じた。総合職になれば責任も増すだろうと悩み、上司に相談したところ、「せっかくのチャンスなのだから、自分のライフスタイルを先々まで考えても仕方ないと。『まずは挑戦しなさい!』と背中を押してもらえたので」と長塚さん。

2003年に総合職への登用試験に合格。携わる業務は変わらなかったが、自分の中ではモチベーションがさらに高まったという。