展望記憶タイプの違いは仕事にも影響している

実はこの展望記憶のタイプの違いは、仕事の仕方に大きく影響します。

前頭葉型の人が仕事で重視することは、量とタイミングです。その日にやるべきことが5つあるとしたら、使える時間は3つの枠しかないから、1つ目の時間枠である9時から10時に一気に2つ済ませて、移動中に1つ、15時に帰社したらすぐ2つ片付ければ終えられます。期限を設けるときも、1週間後までにやるとは考えず、来週月曜日が締切だから今週の水曜日に8割つくっておく。こんな感じで、ピンポイントで予定を組み込みます。

どれだけの量をタイミングよくこなせたかということが、仕事ができたことの評価ポイントなのです。

側頭葉型の人が仕事で重視するのは、質と順番です。5つのやるべきことがあったら、まずこれをしてからこれをして、その間に時間があるからこれを済ませておく。会議が終わったらこれをして、最後にこれをやれば全部できる。やるべきことのリストがあり、それぞれが「常時やるべきこと」「今日中」「今週中」「今月中」というジャンル別に分けてあり、期限が迫っているものから順番に取り組みます。作業の質と、順番通りにこなせたかが、評価のポイントです。

両者の間には、たびたび意見の食い違いが起こることがあります。

前頭葉型は量を、側頭葉型は質を重視する

以前、ビジネスセミナーでこんな場面がありました。講師が「すべての仕事に締切を設けること。これが大事です」と話したら、参加者の1人が「締め切りのない仕事なんてあり得ない! そもそも締切を設けていないなんて仕事への危機意識が足りない!」と反論されました。

この講師は側頭葉型で、常時やるべきことに一向に手がつけられなかったり、1つの作業をし始めたらさらにやることが見つかって、それをやっていたら次の作業に移行できなかったという経験があり、それを解決するために、どんな些細な作業でも締切を設けるという方法を編み出したのでしょう。ところが、前頭葉型の人にとっては、締切というタイミングを先に設定するのが常なので、そんなのは当たり前だと感じたのです。

また、側頭葉型の人が1つずつしか片付けられていなかった作業を、ある日、前頭葉型の人が代わりにやったところ3つも片付けられました。前頭葉型の人は誇らしそうに報告しましたが、点検すると作業には不備があり、結局やり直すことになってしまったのです。

側頭葉型の人は「ただやればいいというわけじゃない」と怒るという場面もよくあります。両者の「量」と「質」という評価基準の違いが露呈したのです。