成果主義イコール結果主義という勘違い

テレワーク時代は成果型賃金への移行が必要だというと、「かつて日本は、行き過ぎた成果主義によって社内で足の引っ張り合いが起きて失敗した。同じ轍を踏むつもりか」と反論をいただくことがあります。テレワークはチームのコミュニケーションが希薄になりがちで、成果型賃金を導入すると余計に失敗しやすいというわけです。

しかし、この意見は二つの大きな誤解に基づいています。まず、成果主義イコール結果主義ではありません。成果主義で評価の対象になるのは、最終的な数値だけではありません。結果に至るプロセスも評価の対象です。結果を出すためにあらかじめ決められていた行動をきちんと遂行すれば、それも成果の一つとして考えます。

ところが、人事関係者にも成果主義と結果主義を混同している方が多く、成果主義はプロセスを無視した賃金制度だという誤解が世間にも広がっています。私も結果のみにフォーカスした評価は危ういと思いますが、本来の成果主義はそういうものではない。プロセスを含めて評価をすれば、かつてのような失敗は起きないはずです。

また、チームワークのための行動も、成果主義なら明確に評価することが可能です。たとえば「ワン・オン・ワン・ミーティングを週1回30分やる」「1時間に1回は上司に仕事の進捗を報告する」というように細かくプロセス目標を設定すれば、曖昧さが残るこれまでの目標管理より、テレワークにずっとフィットしやすいはずです。

テレワーク時代に活躍する人の3つのスキル

指示はテレパシーではなく明文化して伝えること、そしてプロセス目標を細かく設定したうえで目標管理をすること。テレワークの浸透で、これからはこうしたマネジメントが主流になっていきます。

では、こうした変化によって活躍できるのはどのような人材でしょうか。高い目標遂行能力が求められることは言うまでもありませんが、その前後にある二つのスキルを持っていることも重要です。

まず、目標設定スキルです。自分のジョブに対する会社の期待要求レベルはどの程度なのか。それを理解したうえで、自分から能動的に目標を設定するのです。もう一つは、自己評価スキル。一般的に自己評価は他人評価より高いと言われていますが、目標を遂行できたかどうかを本人が客観的に評価できれば、上司が面談で確認する必要がなくなります。

目標設定、目標遂行、自己評価。これら3つの能力を高いレベルで持っていれば、上司の手を煩わせることなく部下がセルフで回していけます。テレパシーマネジメントや年功型賃金は上司の手抜きですが、テレワーク移行後は別の形で上司に楽をさせあげるわけです。もちろんセルフで回れば、働きやすさややりがいが向上して、より成果を出しやすくなる効果も期待できます。

まずは会社が用意した目標管理シートの枠を超えて、「自分でこういう目標設定をしました」と提案してはいかがでしょうか。それを嫌がる上司はマネジャー失格で、実際は応援してくれる上司が多いでしょう。

テレワークで従来のマネジメントは通用しなくなります。一般社員も受動的にその変化に身をゆだねるのではなく、先回りして手を打っていくことが大切なのです。

構成=村上 敬

高橋 恭介(たかはし・きょうすけ)
株式会社あしたのチーム 代表取締役社長

千葉県松戸市生まれ。千葉県立船橋高校出身、東洋大学経営学部卒業後、興銀リース株式会社に入社。リース営業と財務を経験する。2002年、創業間もないベンチャー企業であったプリモ・ジャパン株式会社に入社。副社長として人事業務に携わり、当時数十名だった同社を500人規模にまで成長させ、ブライダルジュエリー業界シェア1位に飛躍させた。同社での経験を生かし、2008年リーマンショックの直後に株式会社あしたのチームを設立、代表取締役に就任する。国内外3000社を超える中小・ベンチャー企業に対して人事評価制度の構築・クラウド型運用支援サービスを提供している。現在も全国で年間100回以上の講演に登壇し、数多くの著書も出版している。