「背中を見て学べ」は通用しない

テレワークの時代になれば、人材育成の手法も変わらざるを得ないでしょう。これまで日本で幅を利かせてきたのは、「背中を見て学べ」というOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)でした。これも一種のテレパシーマネジメント。私はOJTほど乱暴な教育システムはないと考えていますが、とにもかくにも日本企業ではそれが成立してきました。

しかし、テレワークへの移行でOJTも限界があらわになりました。オンライン会議ではみんな前を向きます。背中を見せようにも見せられないのですから、他の方法で育てるしかない。

具体的には、やるべきことをマニュアルの形で明文化する必要があります。また、研修もオンライン化が進みますから、動画をしっかり作り込まなくてはいけません。営業やマーケティング部門が顧客向けに動画を作り込むのと同じ。本部にとってのお客様は自社の社員ですから、リッチな研修動画を提供すべきです。

変化を求められるのは現場のマネジャーも同じです。テレワークでは空気で伝えることが困難なので、一つひとつ明確に言葉にして指導しなくてはいけません。これからは「空気を読んで動け」が通用しないことを肝に銘じておいてください。

いるだけで給料がもらえる社員は許されるか

テレワークで限外が露呈したものといえば、年功型賃金もその一つでしょう。年功型賃金は、製造業中心の産業構造で、人口ボーナスがあってGDPが上昇し続ける時代にはうまく機能していました。いまでも定型業務についてはワークすると思います。しかし、社会の状況が変わり、ビジネスパーソンの仕事も定型ではないものが増えてきました。その結果、会社にいるだけで給料がもらえて、さらに毎年増えていく賃金体系に疑問を持つ人も増えています。

その流れを加速させたのがテレワークです。これまでのオフラインの会議では、そこに座っているだけの“乗っかり社員”も存在を許されてきました。何も発言しなくても、物理的に存在することで何か仕事をしているように見えたからです。

しかし、オンラインになるとどうでしょうか。出席者全員の顔が並べられている設定ではなく、発言者の顔しか表示されない設定であれば、いるだけで発言しない社員は存在していないのと同じです。存在していないのに給料がもらえるのは、さすがにおかしい。テレワークの浸透で、多くの人がそのことに気づき始めたのです。

かわりに求められているのは、パフォーマンスを評価して、その評価と連動して額が決まる成果型賃金です。年功型から成果型へのシフトはコロナ前からの大きなトレンドでしたが、コロナで脱年功型賃金の動きは3年早まったと言っていいでしょう。