夜中、突然涙が止まらなくなる

とはいえ、専業主婦となってからは、気力を失ってしまった。「毎日スマホゲームばかりやっていた。何も考えなくてもできることだったから」と大東さんは苦笑する。知的好奇心の塊だった大東さんが、今振り返ってみても「一番私らしくない時期」だったそうだ。

そんな生活が1カ月続いたころ、夜中に突然涙が止まらなくなった。「私は今までバリバリと働いていたのに」――そんな思いが、心を蝕んでいった。

大東さんの精神状態が危うくなっていると気づいた夫が、「自分だけの時間を持てるよう、ヘルパーを雇おう」と救いの手を差し伸べた。

それから、1日3時間、ヘルパーが家に来るようになった。この3時間だけは、家族のことを一時忘れ、自由にできるようになった。気持ちを切り替えることができた大東さんは、次のキャリアになるビジネスの模索を始めることにした。すると、少しずつ前向きさを取り戻すことができたため、ヘルパーさんには住み込みで働いてもらうことに決めた。

300個のブログを立ち上げたが、売り上げは700円

しかし、会社員を辞めた自分にとって、異国の地で一体どんな働き方ができるのか全く分からなかった。ネイルサロンの受付をやってみたり、商品を仕入れてネットで販売してみたり、できそうなことは試してみたが、全くお金にならない。「自分には、お金を生み出す力がない」ことに気づき、大東さんは愕然とした。

そこで、大東さんは「自分がお金を生み出す場所」を探し始める。まず、インターネットで「主婦 副業」と検索し、アフィリエイト(成果報酬型のインターネット広告)という手段を見つけると、「バレンタイン」「ひな祭り」など異なるアフィリエイトのテーマを300個見つけ、それぞれのブログを立ち上げた。

手間暇はかかるが、これは市場調査の一環だと捉えていた。P&G時代に培った、ニーズを探るマーケティング思考は、こんなところで役に立った。

300も立ち上げたブログだったが、1カ月の売り上げはたったの700円。それでも、見えてくることがあった。300のテーマのうち、「赤ちゃんグッズ」のブログは他の記事よりも読まれていることに気づいたのだ。