転職で自らの成長スピードをアップ
出向から半年足らずで再度の異動希望。自分の気持ちと正直に向き合って出した結論だったが、これで評価が下がってしまったのか、小沼さんは別部署のマネジャーより低いポジションを打診される。一時は大いに落ち込んだが、これが今後のキャリアについてあらためて考えるきっかけになった。
どうすればCFOの職に近づけるのか。そんな悩みから救ってくれたのは、夫の一言だった。「CFOを目指すならベンチャーに行ってみたら?」とアドバイスしてくれたのだ。
考えてみれば、目指すポジションがあるならそのポジションで迎えてくれる企業に行くのがいちばん。キャリアパスとしても最短だし、その後の成長も格段に早くなるはず──。考えれば考えるほどワクワク感が高まり、CFOの職をオファーしてくれたランサーズへの転職を決めた。
入社直後から資金調達に携わり、半年後には執行役員に就任。株式公開準備などで精神的にも肉体的にも追い詰められ、体調を崩しそうになったこともあったが、心配した経営幹部や夫から言い渡された「3日間の休養」のおかげで回復できたという。
「3日間ひたすら育児に専念して(笑)、これがすごくいい気分転換になりました。子どもたちの笑顔を見て平常心に戻れたというか、仕事モードではない素の自分を思い出せたんです」
管理職が意思決定の調整役だとすれば、役員は意思決定の最後の砦。「背後を守る人がいないから何事も自分で決めるしかない」と、責任の重さをかみしめている。今も苦しい時はあるが、一生懸命考えて後悔のない決断をする、そのプロセスすべてがいい経験になっているという。
今後の目標を「会社をさらに成長させて、同時に自分も成長していきたい」と語る小沼さん。まだ30代後半。実力ある女性CFOを目指して、これからも挑戦と成長を続けていく。
■役員の素顔に迫るQ&A
Q 好きな言葉
やるならやらねば
Q 愛読書
『LEAN IN』シェリル・サンドバーグ
「仕事でも私生活でも大きな影響を受けた本。子どもを産みたいと思うきっかけにもなりました」
Q 趣味
子育て、料理
Q Favorite item
走れるハイヒール
「新人時代、早歩きの上司に走ってついて行っていました。今もその習性が抜けず、移動の際は歩くより走ることが多いです」
文=辻村洋子
一橋大学商学部卒業。証券会社の投資銀行本部でアナリスト/アソシエイトとして活躍。2010年に人材サービス企業に転職、財務部において株式公開や財務戦略立案、M&Aなどを担当。17年にランサーズにCFOとして入社し、翌年より現職。