「仕事の見える化」で人事・総務系でも評価が可能に

一方、毎日朝礼なんてナンセンスだと指摘するのはサービス業の人事部長だ。人事部では去年の後半から東京オリンピック時のテレワークを想定し、独自の業務マネジメント改革を進めてきた。在宅など働く時間と場所の自由度を高めるために個々の部員の仕事のスケジュールと情報をネット上で共有化し、週1回のミーティングで進捗管理を行う仕組みを推進してきた。人事部長はこう語る。

「まず人事部として取り組むタスクの一覧をつくり、タスクの目的とゴールを共有する。そのタスクの目標が部員一人ひとりの目標に紐付いている。いつまでに何をやるかというタスクの進捗状況を事前に記録し、週1回の会議で部員同士や上司が確認し、進める上で困っていることがあれば皆で議論することにしている。つまり1週間という時間をどのように使うかは本人の自由だが、一方で自律的に仕事を進めることが求められる。もちろん途中で誰かに相談したい場合は躊躇なくチャットで連絡すること、相談された相手は、忙しいときは『1時間後に連絡をくれ』と、必ず代案を出すこと、など細かいルールをつくって徹底した」

こうしたことを進めてきた結果、3月末から在宅勤務下でも何とか機能しているという。個々の部員の仕事の“見える化”によって人事評価にも困らないと言う。

「タスクの進捗状況や個々の成果が見えるので評価も困らない。評価面談の際の本人の自己評価とほぼずれることもない。人によって報・連・相がうまいか下手か、業務遂行力などの能力発揮のレベルも見える。また、それに対する課長の指導力もわかる」(人事部長)

テレワークの推進で、成果を軸にした評価が強まる

ただし、他の部門ではこうした仕組みづくりをしてこなかったために部下の進捗管理ができず混乱している管理職もいるという。人事部長は「管理職が今までちゃんと指導してこなかったツケが露呈している。今後、在宅勤務などテレワークが進めば、より目標の達成度や成果を軸にした評価が強まるだろう」と指摘する。

ポストコロナ後の働き方のニューノーマル(新状態)はテレワークを基調にデジタルスキルを駆使し、時間と場所の自由度の高い働き方に変わる一方で、行動評価もデジタルで「行動プロセス」を把握し、より「成果」の比重が高まることになるかもしれない。

そうなると、このシステムを駆使できない社員や管理職の評価は厳しいものになる。前出の建設関連会社の人事部長は在宅勤務で働いている社員の現状についてこう明かす。

「優秀な部下は放っておいても自分のやるべきことを理解し、率先して仕事を進めている。日頃からコミュニケーションのある社員は、在宅でも連絡を密にしながら仕事を進めている。しかし、逐一指示しないと働かないオジサンや不良社員は、仕事をしないで家で寝ている人もいるらしい。また、性格的にコミュニケーションが下手な社員は誰からもアクセスが来ないので、やりたい放題の状態になっている。在宅勤務の長期化で社員の本当の能力が炙り出されている」

人事部長は従来の人事評価のあり方を見直す必要があると指摘する。そして今後起こりうるリストラの対象者は「成果」を軸に選別することになるだろうと言う。