退職勧奨の根拠は2つの評価
退職勧奨自体は法的には問題ないが、「辞めろ!」と言えば「退職強要」になり「不当解雇」に発展しやすい。また、退職勧奨するには、それなりに説得力を持たせるために人事評価結果を提示し、本人が成績不良者であることを示す必要がある。
一般的な人事評価は、目標達成度や営業数字など定量化された「成果評価」と、チームワークやコミュニケーションなどの「行動評価」(コンピテンシー)の2つに分かれる。2つの評価のウエイト付けは企業によって異なるが、最終的にS、A、B、C、Dの評価ランクが決まる。
テレワークで「行動評価」をするのは難しい
ところが、新型コロナウイルの感染拡大や政府や自治体の出社制限の要請でテレワークが急速に広がり、すでに在宅勤務が2カ月を超える企業も出てきている。その中で「行動評価」が難しいという声も出始めている。
建設関連業の人事部長はこう語る。
「営業職はもともと直行直帰も少なくないし、モバイルワーク主体でやってきた。数字(成果)が評価の大部分を占めていたのでそれで支障がなかった。しかし、それ以外の人事・経理・総務などの管理部門やマーケティング、制作部門は、目標達成度以外の行動評価も重視していた。例えば『コミュニケーションを取りながら周りと連携しながら仕事を進めていた』とか『後輩の育成・指導を熱心にやっていた』といった項目は、在宅勤務に入ってからまったく見えなくなってしまった。これまでのように会社にいれば、管理職は部下の仕事ぶりをみれば大体わかったが、在宅勤務では難しくなっている」
今回の自粛ではこれまで在宅勤務を経験しなかった“にわか在宅勤務者”も多く、社員をマネージする管理職がとまどうのも無理はない。とくに評価は半期ごとに実施する企業が多く、部下が見えない管理職は、部下の仕事の進捗状況をどのようにして把握すればいいか悩んでいる人も多いだろう。管理職の中には毎日、朝礼・終礼のテレビ会議を開くという珍現象も発生している。