現代の女性が気づくべきシャネルからのメッセージ
リトル・ブラック・ドレスを発表したのは、シャネルが40代の始めのこと。それまで黒は男性が身に着ける色で、労働の色。女性が着るのは哀悼の意を表すときのみでした。しかし、シャネルは「あらゆる色に勝る色は、黒」として、男性の付属物ではない、自立した働く女性の象徴、格式高く気品のある色として黒を採用したのです。
黒くてシンプルで動きやすくおしゃれなそのドレスは、上流階級の女性たちを魅了しました。やがて、シャネル以外のブランドがデザインするリトル・ブラック・ドレスも広く流通していきましたが、彼女はその現象をネガティブにはとらえなかったといいます。世界中の女性が黒いドレスを着て、たくましく自分らしい人生を力強く歩んでいくことを望んでいたからかもしれません。
シャネルにとって黒は、女性の新しい生き方を示すための、自立の色だったのです。
「女性たちよ。もっと自由に生きなさい」
シャネルの黒からは、そんなメッセージを受け取れます。
今も、黒が「かっこういいから」「ブレない軸を感じる色だから」などの理由で、自ら選んで黒を着ている女性も多いと思います。それは、私も素敵なことと感じています。
しかし、シャネルの黒と「無難だから」という黒では、思いがまるで違います。現代の女性が、「みんなと同じでありたい。目立ちたくない」という理由で黒を着ていることを知ったら、シャネルはなんと思うでしょうか。
常に新しく革新的なチャレンジを求め続けたシャネル。恋多き女性であったけれども、男性に寄りかかって生きることはなく、人と違うことを愛し、自立した女性。「かけがえのない人間であるためには、人と違っていなければならない」という名言には、彼女の生きる姿勢そのものが表れているように思います。
そんな生き方を表現する色として、シャネルは黒を世界中の女性たちに着せたのです。