世界的な一流ブランド、シャネルに25年間勤め、現在は色彩心理カウンセラーとして活躍する佑貴つばささんは、「大人の女性は黒ばかり着てはいけない」と言います。ではなぜ、ココ・シャネルは華やかな女性のドレスに「黒」を取り入れたのでしょうか。現代、無難と思われがちな「黒」と、シャネルが「黒」に込めたメッセージはなにが違うのか。シャネルが生きていた時代よりずっと自由な現代だからこそ、黒に頼らないで欲しい理由とは……。

※本稿は佑貴つばさ『なぜ、あなたは「黒い服」を着るのか 人生が変わる色の魔法』(マキノ出版)の一部を再編集したものです。

アジア女性の共同作業
※写真はイメージです(写真=iStock.com/SetsukoN)

シャネルのイメージカラーが黒である理由

私が以前勤めていたファッションブランド、シャネルのイメージカラーの一つは、黒です。

創業者であるガブリエル・シャネル(ココ・シャネル)が、1926年に発表した「リトル・ブラック・ドレス」。黒一色で装飾のないドレスは、女性の魅力を引き立て、今も欧米では女性の正装に欠かせない定番アイテムとなっています。

ココ・シャネルが、女性のファッションに黒を取り入れる以前の時代。階級の高い女性の服装は、コルセットで腰をきつく締めつけてから着るドレスが主流で、働くためのものではありませんでした。パートナーの男性の経済力に合わせて、女性の服装が決められた時代。

女性の装いの華やかさによって、男性の威厳が物語られていました。

第一次世界大戦(1914~18年)が起こり、女性も働く時代が来ます。女性が男性の付属物として、扱われていた時代が終わりを告げるちょうどそのころ、ココ・シャネルは、自立した強い女性の象徴のようにファッション界に現れます。

彼女のデザインする服は、窮屈なコルセットから女性を解放し、動きやすさを重視したものでした。その最初となったのは、ジャージ素材を使った女性服でした。伸縮性のあるジャージは、男性用のスポーツウェアや下着に使われていた素材。オートクチュールのデザイナーが注目することのなかったもので、革命的な変化と衝撃をファッション界に与えました。