危険性について知識を持っているのになぜ自粛しないのか
そこで私は、さりげなく横を通りながら様子を伺ってみました。服装や話し方からすると、それなりに知的で裕福そうな人たちです。そして漏れ聞こえてくる会話は、「トランプ大統領の指揮下におけるアメリカのコロナウイルスの情勢について」といったものだったのです。
つまり彼らはコロナに関する知識も情報も持ち合わせている。おそらく高齢者が感染したら重症化するということも知りながら、大勢で集まって花見酒を飲んでいるのでしょう。
メディアでは、外出を自粛しないのは若者たちであり、彼らは感染しても症状が出にくいのをいいことに遊び歩いていると批判されていました。しかし各種統計によれば、外出を自粛しない人たちはほぼ全年齢層にわたって存在し、高齢者の外出率も高いことが明らかになっています。
「これは一体、どういうことなんだろう?」
強い興味を抱いた私は、高齢者が外出を自粛しない理由を自分なりに考えてみることにしました。
素直に言うことを聞かないのは、若者よりも「団塊の世代」
実際のところ、高齢者はよく出かけているにもかかわらず、このことは行政もあまり問題視していないようですし、テレビや新聞などでも取り上げられることが少ない。
やはり政治家にとってみれば高齢者は大票田ですし、テレビや新聞など既存メディアの視聴(購読)者は高齢者が大半なので、彼らを敵に回すことはしたくない。だから若者を批判しておくのが、いちばん差しさわりがないのでしょう。
私たちが深く考えずにそういった若者への批判を受け入れてしまうのは、「若者は反抗的だ」という既成概念があるからです。でもよく考えてみると、いまの若者は、実はあまり反抗的ではないのではないでしょうか。
もちろん例外はあるでしょうし、ひとくくりにすることはできません。しかし若い社会人や大学生と話していると、いまの若者は素直ですし、自己中心的ではなく、世の中全体のことを考えている人が多いように思います。
むしろ反抗的といえるのは、団塊の世代のほうなのかもしれません。
ご存じの通り、団塊の世代とは第2次世界大戦直後のベビーブームのときに生まれた人たちで、現在71~73歳くらい。
とにかく人口が多いのが特徴で、彼らの多くは若いころ激しい学生運動を経験し、自分たちより上の世代の大人たちや権力に「NO」を突き付けてきました。そのせいか、いまも体制への反抗的な感覚がどこかに残っている。そのため、どこまで自覚的かはわかりませんが、政府や自治体から「外出せず、家にいてください」という指示が出たりすると、素直に従うことに抵抗を感じる人も多いのではないでしょうか。