女性が根づくことで男社会はかなり壊れた

ハーバードビジネススクール教授で社会学者のロザベス・モス・カンターがいうには、ある集団の中でマイノリティが3割を超えるようになると、ぐんと存在感を発揮しだすとのことだ。確かに、典型的な男社会といわれた大企業でも、ここまで女性比率が伸びたことで、大きく風土が変わった。

10年前なら当たり前になされていたことが、今ではセクハラ・パワハラだということが常識化している。のみならず、たとえば有休などは神棚に飾っておくものだ、などと言われていたのが、子供の卒業式に平日でも会社を休んで出ることが半ば当然となってきた。学校の参観でも有休を採れるような会社も増えている。女性が会社に根付いたことで、男社会はずいぶん壊れた。

30代大卒社員の3割をも占める女性たちは、次世代の係長、課長となっていく。早晩、女性の役職者比率はぐんと伸びるだろう。

もう、「男たちの巻き戻し」が起きない理由3つ

ここで、過去のように「男たちの巻き戻し」は起きない理由を述べておきたい。

1.重要職務に女性がしっかり根を張っており、彼女らを放逐することはできない。
2.女性の学歴が上がり、大企業が採用したがるような上位大学でも女子学生割合が高まっている。新卒時に学歴を偏重するならば、女性採用はもはや避けて通れない。
3.少子化はますます進行するため、不況のどん底期を除けば、人手不足は続く。
だから女性活躍は今後も続くだろう。

日本の「女性活躍」はいよいよ本物になる

そう、セクハラ・パワハラ・♯Me Too運動などは、「好況期の甘い顔」で生まれた施策ではなく、女性が根を張ったことによる根本的な社会構造変革だったのだ。今後、不況が来ても、女性の活躍は続く。だから後戻りなどしない。

一つ、風景が変わるとすれば、直近は、アファーマティブアクション(マイノリティの積極登用)などで、女性活躍が「推進」「優遇」されてきた。こうした点は、あと数年で「もはや女性が選ばれることは当たり前」となるから、なくなっていくだろう。

女性初、女性比率、こうした物差しが不要になるのだ。

少子化で後押しされた女性活躍が、2010年代という甘いステップボードの時代を経て、いよいよ本物になるときが来ている。それは好不況など関係ない、メガトレンドだと私は考えている。

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海老原 嗣生(えびはら・つぐお)
雇用ジャーナリスト

1964年生まれ。大手メーカーを経て、リクルート人材センター(現リクルートエージェント)入社。広告制作、新規事業企画、人事制度設計などに携わった後、リクルートワークス研究所へ出向、「Works」編集長に。専門は、人材マネジメント、経営マネジメント論など。2008年に、HRコンサルティング会社、ニッチモを立ち上げ、 代表取締役に就任。リクルートエージェント社フェローとして、同社発行の人事・経営誌「HRmics」の編集長を務める。週刊「モーニング」(講談社)に連載され、ドラマ化もされた(テレビ朝日系)漫画、『エンゼルバンク』の“カリスマ転職代理人、海老沢康生”のモデル。著書に『雇用の常識「本当に見えるウソ」』、『面接の10分前、1日前、1週間前にやるべきこと』(ともにプレジデント社)、『学歴の耐えられない軽さ』『課長になったらクビにはならない』(ともに朝日新聞出版)、『「若者はかわいそう」論のウソ』(扶桑社新書)などがある。