女性活躍も、また夢と終わるのか
2010年代という巨大なバブル期には社会は働く人たちに、大盤振る舞いをして見せた。フリーランスやWワークが推奨され、時短だ働き方改革だ、と企業は労働者にしきりに甘い顔をして見せた。もちろん、ここで手にした権利を全て失うことはないと思うが、雰囲気は一変するだろう。
こんな風に書くと、プレジデントウーマン読者の皆さんは、「女性活躍も夢と終わるのか」と気をもんでいるのではないだろうか?
確かに、過去の時代は人手不足期に女性が社会進出し、その後の不況期に逆回転が起きるという連続だった。ただ、今回ばかりはそうならないと私は考えている。
まず歴史を振り返ってみよう。
すでに日本については80年代の均等法成立とバブル景気の重なりにより第一世代という一瞬の女性進出時期があり、バブル崩壊でそれは潰えた。世界史を俯瞰すると最も顕著な例は、戦時中に壮年男性が軍隊に召集され、産業界には女性が大量に取り込まれたことが何度も起きている。そうした様を男性中心の労働組合などからは「ダイリューション(薄める、水割り)」などと揶揄された記録が近代からずっと残っている。ただし、戦争が終わって男性が復員すると、女性は職を追われ、元の木阿弥になる、という繰り返しでもあった。
“逆戻り”しなくなった最初のケースが北欧
それが大きく変わるのは、第二次世界大戦後の北欧からだ。
北欧は戦禍を逃れたため、欧州の戦後復興を支える工場の役割を担った。そのため、大変な人手不足となり、大戦中以上に女性の労働が奨励されたのだ。その後に、1950年代の欧州高度成長期があって、人手不足は欧州全体に広がり、女性の活躍は途絶えず浸透していく。 そうして一定数、女性がしっかりと産業に根を張ると、発言権を増して、ちょっとやそっとでは逆戻りができなくなっていく。
それと同じことが日本でも起きると私は読んでいるのだ。
まずこの10年間で日本社会での女性進出は遅まきながら、ようやく進んだと見ている。図表1は2009年と2019年の従業員数1000名以上の大企業での、女性役職者割合だ。大企業は、まだ大卒女性を本格採用しだして20年にもならないため、ベテランが多い役職者では女性の割合はそれほど高くはないが、この十年で課長でも1割を超え、比較的若く登用される係長では2割近くにまで伸びた。
そしてもう一つ。少子化が進む現在では、過去のように結婚や出産で女性のキャリアを終わらせるような人材の無駄を企業はしなくなっている。図表2は、大企業の年代別に見た大卒社員に占める女性の割合だ。2009年時点では30歳を過ぎると女性割合は20%にも届かなかったものが、現在では30%を超えている。