台頭するESG投資にも乗り遅れる

さて、ESG投資の観点からも女性活躍推進は非常に大切です。Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)などの非財務情報を重要視する投資を推進する企業が増えています。

国連は2015年9月、「貧困をなくす」「ジェンダー平等の実現」など、17の目標からなる「SDGs(Sustainable Development Goals・持続可能な開発目標)」を全会一致で採択しました。日本でも急に「SDGs」という言葉が浸透しましたが、地球上に住む人々が、安心して暮らせる世の中をつくるために持続可能な世界共通の目標が掲げられました。

これを機に、国際社会のインベストメントチェーン(投資の連鎖)は、SDGsの概念に沿ったものに大きく変わり始めました。例えば、米資産運用大手ブラックロックはESGを軸とした運用を強化すると表明しました。2020年半ばまでに石炭関連会社への投資を大きく減らします。米大手投資銀行のゴールドマン・サックスの投資運用部門でも投資環境プロセスにESGの要素を取り入れることは顧客の資産運用の目的に資すると同時に、環境、社会の課題解決に貢献できると考えているようです。機関投資家以外にも個人投資家もESG投資への関心は急速に高まっていると言います。

日系企業の多くは環境やジェンダーの問題への対応が遅れています。生産年齢人口が減少する中、働く女性の活力を取り込まないと日本経済の明るい未来は考えられません。私には5歳の娘がいますが、彼女が社会に出た時に今と日本のジェンダーギャップが変わらなければ絶望的です。子供や孫の世代のためにも、労働者としても、投資家としても、正しいところに時間とお金を投下しないとならないと感じます。世界から見て、日本がおかしいと思われないようにも、円の価値を維持するためにも、この環境を変えていかなければ未来はおぼつかないでしょう。

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花輪 陽子(はなわ・ようこ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士

外資系投資銀行を経てFPとして独立。2015年からシンガポールに移住。『少子高齢化でも老後不安ゼロ シンガポールで見た日本の未来理想図』など著書多数。