ブルー・オーシャンも、いつまでも青くない

そこで昨今、多くの企業が狙うのは、比較的参入しやすい「ブルー・オーシャン」市場。既述の通り、中島さんも「07年当時、『空間除菌』という市場は、まだ形成されていなかった」と話していた通り、そのころは未開拓の領域だったからこそ、クレベリンのような新商品が新たな市場を創造できたと言えるでしょう。

ところが、この市場にも注意点があります。それは、真っ青に澄み切った海が、いつまでも澄んだままではない、ということ。

よく例に挙がるのが、「クロネコヤマト(ヤマト運輸)」です。同社が、個人宛の宅急便市場を開拓した1976年ごろまで、物流業界では“遠距離・大口”の物流が主流でした。だからこそ、ヤマト(当時・大和運輸)は“近距離・小口”を強みに、新たな市場を開拓できたのです。

レッド・オーシャン戦略とブルー・オーシャン戦略

ですがその後、同じ分野に参入する企業が相次ぎ、真っ青な海だった“近距離・小口”の宅急便市場は、いつしかレッド・オーシャンへと変貌しました。参入しやすい市場だったからこそ、他にまねされやすく、競争が激化してしまったのです。

ブルーとレッドの間をうまく泳ぐ

だからこそ大幸薬品は、家庭用の販売を始めた08年直後から、空間除菌を裏付けるエビデンス(証明できるデータ)を次々に獲得。

並行して、11年に二酸化塩素製品の正しい普及や品質向上のために「日本二酸化塩素工業会」を設立、安全性の規格を作成したほか、近年では度々、商品の形状やラインナップの見直しにも努めているのでしょう。

まだ荒らされていない、魅力的な新市場。でもそれゆえ、開拓後は新規参入組に打ち勝てるよう、さらなる差別化や需要の引き寄せに尽力する必要がある。「クレベリン」は、まさにブルーとレッド、二つの海の市場領域を、うまく泳いできた好例と言えるのではないでしょうか。

牛窪 恵(うしくぼ・めぐみ)
マーケティングライター

マーケティング会社インフィニティ代表取締役。修士(経営管理学/MBA)。2020年4月より、立教大学大学院・客員教授。同志社大学・ビッグデータ解析研究会メンバー。財務省・財政制度等審議会専門委員、内閣府・経済財政諮問会議 政策コメンテーター。著書に『男が知らない「おひとりさま」マーケット』『独身王子に聞け!』(ともに日本経済新聞出版社)、『草食系男子「お嬢マン」が日本を変える』(講談社)、『恋愛しない若者たち』(ディスカヴァー21)ほか、著書を機に流行語を広める。テレビ番組のコメンテーターとしても活躍中。