“空間除菌”という新しい発想を打ち出す

クレベリンの発売は、2005年4月。当初は、二酸化塩素の酸化力で空気中のウイルスや菌、ニオイを除去する「業務用」の感染管理製品として登場しました。

使用していたのは、おもに医療機関や介護施設、外食産業などの事業主。一方で、「2007年ごろから、一般家庭でのニーズも少しずつ増えている印象がありました」と、同マーケティング本部・PRマネージャーの中島杏子さん。

そこで08年9月、「一般用」の販売を本格的にスタート。この頃は、空間や物に噴射して使用するスプレータイプと、室内に置いて使用するゲルタイプ(置き型)の2種類のみでした。

このとき打ち出したのが「空間除菌」という発想。中島さんは「当時はまだ、こうした市場が形成されていなかったはず」だと言います。

新型インフルエンザ流行で定着、市場規模は100億円に

ところが翌09年春~10年にかけて、新型インフルエンザが猛威を振るいます。その後も冬~春を中心に、季節性インフルエンザへの予防が重視される中で、「空間除菌」は徐々に市場として定着。

その後、市場にはクレベリンのように、汚水処理の消毒などに使われる二酸化塩素を用いた商品のほか、室内や衣類の「除菌・消臭」をうたうスプレータイプの商品が次々と投入されていきました。競合は、花王やP&G、白元といった大手のほか、多数の中小メーカーまで。いまやその市場規模は、約100億円にものぼります(2019年11月現在)。

競争がより激しくなってきた2018年ごろ、大幸薬品は「クレベリンブランド」のマーケティング戦略を一新、ターゲットを、従来の「インフルエンザになりたくない人」というおおまかな設定から、「インフルエンザに絶対なれない人」として妊産婦さんと受験生及びその親御さんに絞ることを決断します。

そして、大きな2つの行動を起こします。1つは、ブランドロゴやデザインの全面リニューアル、もう1つは、大規模な消費者調査をもとにしたコミュニケーションの変更です。