エンワールド・ジャパンで金融業界を担当している下田由紀さんは「どんな業種・職種でも、経営的な目線で、世の中を俯瞰ふかんしたり、物事をとらえたりできる人が求められています。財務状況を把握し、それに合わせた提案ができないと上のポジションにはいけない。キャリアアップを目指すなら、財務資料などを読み解く力や経営に関する知識が必要になってきます」と話す。

では、持っていると転職に有利に働く資格はあるのだろうか。

「資格の有無だけではなく、取得を目指した意欲と学びの姿勢に企業は期待感を示す」と広富さん、下田さんは口をそろえる。

「経営企画や会計に関わる仕事をしている人は、簿記や米国公認会計士の資格を持っている人が多い印象です。しかし、それ以外の業務に携わっている方で会計やファイナンスにまつわる資格を持っている人はほとんど見たことがない。現状に危機感を抱いて何かしらの勉強をしていれば、その姿勢と行動はポジティブに評価されます」と広富さんは言う。

今の自分に満足せず上を目指す

「金融業界の人の多くが簿記や宅建、証券アナリストなどの資格を持っています。業務上必要な知識が身につくので入社して間もないころから取り始めるのですが、それだけだと自分の知識がマンネリ化してくるので、上を目指す人はMBAや会計士の資格も取っているようです。今の自分に甘んじないという姿勢が大事ですね」と話すのは下田さん。どんな勉強をすれば論理的思考や数字の知識は身につくのか。

「簿記2級や、英語に自信がある方なら、社会人でも比較的取得しやすい米国公認会計士を目指すだけでも、知識は十分に身につくと思います。MBAを取得するならやはり大学院でしょうね。平日の夜や土日に授業をやっている学校を選んでいるようですよ。よく耳にするのは、一橋、早稲田、青山、明治、グロービスなどです」

働きながら平日夜&土日に通える! 数字に強くなれる大学院

一方、広富さんはグロービスなどテーマが豊富で学び方も複数あるところで、自分が学びたいテーマを好きな方法で学ぶことをすすめる。

「無料でオンラインで学べるJMOOCも手軽でよさそうです。もし大学院に通うなら、ケーススタディーができる環境で場数を踏んで、脳みそを数字脳に変える!くらいの意気込みで臨むのがよいと思います」

最後に、「マネジメントする立場にある人間には数字で物事を考える力は必須」と広富さんは加える。

「管理職になると、定量を用いての説明責任が求められます。大きな会社になればなるほどその傾向は強い。数字を使ってロジカルに話せないと大舞台は動かせないので、学びが大事になります」

広富さつき
広富さつき(ひろとみ・さつき)
オプティマス代表取締役
リクルートキャリアのキャリア領域部門で営業職・企画職に従事し、部長職を歴任した後、執行役員に就任。2014年にオプティマスを起業。16年、ビズリーチ主催「ヘッドハンター大賞」を受賞。官公庁委託事業等の人材セミナー講師。
 

下田由紀
下田由紀(しもだ・ゆき)
エンワールド・ジャパン NIKKEI部門 HR/F&Aシニアコンサルタント
大手金融会社を経て、インテリジェンス中国に転職する。2014年にエンワールド・ジャパンに転職し、金融業界および金融専門職種などの専任コンサルタントに。ビズリーチ主催「ヘッドハンター大賞 金融部門MVP」を17年・18年と2年連続受賞。
 

撮影=花村謙太朗 イラスト=まゆみん

福田 彩(ふくだ・あや)