出社日は月2回、全社員リモートワーク

その後のアガサは、医療機関向けと製薬会社とで料金プランを差別化するようにするなど、さまざまなサービス改善と地道なセールスを経て、安定的に業績を伸ばしている。

「社員の半数が外国人なので、仕事でのやり取りはほとんど英語です。ただ、ネーティブではないので、シンプルな英語でストレートに言わないと伝わらない。自然と、物事を率直に言い合うようになりました。そのスタイルのまま、日本人同士でも透明性の高いコミュニケーションを心がけています」

今では製薬会社を対象に、ヨーロッパや米国など、海外にもサービス販路を拡大。社員も24人に増えた。日本社員は8割が子育て中の女性だ。

女性に限定して選んだわけではないけれど、求人募集でやってきたのは女性ばかりだった。出社日は2週間に1回。毎日の業務は、受付業務もカスタマーサポートも含めて、全社員がリモートワークという環境が、仕事と子育てとの両立に悩む女性にとって魅力的に映ったのだろう。

「朝礼代わりに、毎朝9時にはネット会議をして、近況を報告し合っています。話し合う必要があればチャットツールを使っていつでも話ができますし、隣で仕事をしているのとあまり変わりません」と鎌倉さんは笑う。

今後は、さらにサービス改善を図り、社員のニーズに応えてオフィス環境を整えることも考えているという鎌倉さん。ピンチの後にチャンス有り。持ち前の行動力を武器に、その言葉どおりの未来を切り開いてきた女社長は、5年目に向けてさらなる飛躍を見据えていた。

文=北湯口 ゆかり

鎌倉 千恵美(かまくら・ちえみ)
アガサ (Agatha Inc.)代表取締役社長

名古屋工業大学大学院を卒業後、総務省総合通信基盤局に入省。2001年に日立製作所に転職し、製薬・医療機関向けの新ビジネス開発と新ソリューションの基本設計、プロジェクトマネジメント業務を担当。2011年、製薬企業向け文書管理システムを開発する米国ベンチャー起業NextDocs Corporationの日本支社代表となる。2015年10月、アガサを設立して、代表取締役社長に就任。