カルビーの女性管理職が急に減少

でもその間、不愉快な思いをしていた男性はたくさんいたんでしょうね。

僕が辞めた後、カルビーでは一気に反動が出ているようです。僕が会長の時代に登用した女性が降格させられたりしている。また、退職者も増えているそうです。女性管理職比率も、それまではずっと上がり続けていたのに、僕が辞めた後の2019年4月には4.1ポイントも下がって22.3%になったと聞いています。人数にすると63人になって、10人も減ったそうです。

「松本がいる間はおとなしくしておこう。辞めたらもとに戻してやろう」と思っていた人がいたんじゃないでしょうか。なぜ元に戻そうとしたのかを考えると、そういう人たちは、ダイバーシティのお蔭で業績が上がっていたのだとは思っていないことが大きいでしょう。もちろん、業績が上がる理由はそれだけではないのですが、そこの関連性が見えていないのです。

このことに驚きはしていません。ジョンソン・エンド・ジョンソンでも同じようなことが起きましたから。僕が日本法人の社長だったときは、事業本部長の半分弱は女性でしたが、辞めて3、4年経ったらゼロになっていました。男性の嫉妬は本当に怖いです。

女性活躍推進を一過性のブームにしてはいけない

2、3年前に比べると、ダイバーシティ推進の「火」が小さくなってきたように感じています。女性活躍推進に関連するイベントや会議に行ってみると、参加者の数も減ってきているという印象を受けます。しかし、一過性のブームのようにしてしまってはダメです。

数字だけを見ると、女性の雇用は増えていますが、それで喜んでいてはいけません。中身を見ると、増えているのはアルバイトやパートなど、いわゆる「非正規」の雇用です。つまり、夫の給料が減って、働かざるを得ないから働いている。結局世帯年収が増えるわけではないので、個人消費は増えません。

企業は、利益を上げて成長しなくてはなりません。企業が儲かれば社員の給料も上がり、個人消費も増えますから国全体が豊かになる。そして、本当に何度も言いますが、日本企業はダイバーシティを進めないと成長できません。この国を良くしようとしたら、ダイバーシティから始めるしかないんです。