自分の親だけを介護する時代へ

以前の記事「『父子帰省』で家族全員がハッピーになるワケ」で述べたように、日本の家族規範は父系から個別化へと向かっています。妻の親より夫の親を優先するような風潮はいずれなくなり、夫婦それぞれが自分の親だけを介護する時代がやってくるでしょう。

親世代にも、息子の妻だと気を使うから息子本人に面倒をみてほしいという人が増えつつあります。にもかかわらず「自分の親も妻が介護してくれるだろう」と思っている男性がいたとしたら、今のうちに考えを改めておくべきだと思います。

個別化が進んでいけば、女性だけでなく男性にも介護休暇や介護休業をとる人が増えてきます。子育ては、夫婦の共通課題ですので、個別に対応ということはできません。そのため、どうしても妻に偏る傾向が続いています。しかし親の介護は違います。従来は妻に集中しがちだった介護が分担になるのは喜ばしいことですが、女性は夫の介護休暇・休業中は家事育児分担が期待できない、収入が若干減るといったことも想定しておかなければなりません。

遠距離介護をどう乗り切るか

もう一つ問題なのは、遠距離介護が増えそうなこと。日本では、まだこのノウハウがあまり共有されていないのです。同居や近居であれば、仕事をしながら介護できる可能性も高いのですが、実家が遠方の場合はそうもいきません。

介護スタート時には、休暇あるいは休業をとって1週間ほど帰省し、地元でのケア体制を整えてから職場復帰するといったやり方になるかと思います。しかし、その後もたびたび帰省することになるはずですから、介護休業だけで日数が足りるのかどうか、(のべ3回まで分割で取得できる介護休業に)職場が柔軟に対応してくれるのか、不安に思う人も出てくることでしょう。

勤務先がリモートワークなどを取り入れていればいいのですが、そうした体制がなく休暇・休業を使い切ってしまった場合は、地元に住む兄弟や親戚を頼るか、自分に代わって配偶者に帰省してもらうことになるかもしれません。

会社間の不平等が起きる

この時、配偶者の勤務先のほうが支援制度が手厚く、リモートワークなどの体制も整っていたらどうなるでしょうか。「両立しやすいだろうから」という理由で、配偶者の負担が自然と重くなっていくことが予想されます。

これを防ぐためには、どの企業も平等に、同じ両立支援制度を導入しておく必要があります。現状は企業の規模や経営状態によってばらつきがあり、これが夫婦間での家事・育児・介護分担を不平等にする一因にもなっています。

これは、「君の会社は支援が手厚いから」「時短勤務ができるから」と、妻がワンオペ育児を強いられる構図と同じです。これでは、夫婦の一方の勤務先が、もう一方の勤務先の制度をタダで使っているのと同じ。両立支援制度が整っていない会社は、配偶者の会社に負担を押しつけているのです。