働く女性にとっては、育児と同様「介護」も大きなライフイベントの一つ。少子高齢化が進む日本で、この先仕事と介護の両立はどのように変化していくのでしょうか。家族社会学を専門とする筒井淳也先生に、今後の見通しを聞きました。
車椅子に座っている年配女性
※写真はイメージです(写真=iStock.com/chayathonwong)

夫の親まで介護しなければならないのか

一般的に、女性は男性より多くのライフイベントに直面すると言われています。女性の読者の中には、結婚、出産、育児、介護などに際して、仕事との両立に悩んだことのある人もいるのではないでしょうか。

出産や育児については両立支援制度のある企業も多く、最近では男性の育休取得や家事育児参加も推進されています。一方、介護についてはどうでしょう。育児と違って「いつ頃まで」という予測が立ちにくく、自分の親だけでなく義親の介護まで担っている人もいます。

今は介護休暇や介護休業といった制度もありますが、それぞれ年に5日、93日といった日数しかとれないのでは、長期にわたって仕事と両立し続けるのは難しいものです。現に、今なお1年間に10万人近い人々が介護離職をしています。

働き盛りの時期に介護との両立を迫られる──。これはもう誰にでも起こり得るものとして、今後は働く人も企業もあらかじめ心づもりをしておく必要があります。

では、既婚女性は自分と夫の親、両方の介護を覚悟しておかなければならないのでしょうか。私は、そうはならないだろうと考えています。「夫の親も妻が介護して当然」という考え方は、日本で一定期間続いてきた父系社会の価値観に基づくもの。今、この価値観は現在、確実に薄れつつあります。