そこで同社は、意欲・能力のある人材には男女を問わず「修羅場」を与えて育てるとともに、競争社会を勝ち抜いていく覚悟を持つことを求め、管理職と女性の双方に意識改革を行うことを決めた。

「『男女の違いは出産のみ』と捉え、性別にかかわらず仕事と育児を両立できる風土づくりへの取り組みが始まりました。まずは、キャリアブランクを最小にしながら仕事に打ち込んで成長し続けたいという社員を最大限支援しようとの狙いから、出産・育児を乗り越えるための思い切った施策を打ち出すことにしました。女性管理職は数値目標を設定して着実な登用をめざすものの、決して数合わせの女性優遇の登用は行わないことも明確に打ち出しました」

育児・出産をキャリアブレーキにしないために

同社には女性活躍のための支援策が多々あるが、その目的は子育て支援ではなく、キャリアアップ支援だ。働き続けることが各自の能力の向上につながると考え、出産・育児をキャリアブレーキにしないための施策を強化してきた。

12年からスタートしたのは、育児休暇からの早期復帰者支援。特に生後6カ月未満で復帰する人への支援が手厚い。たとえば、子どもの病気や残業、出張時に利用したベビーシッターなどのサービス費用を補助する「育児支援カフェテリアプラン制度」。通常は子ども1人あたり年間20万円までだが、生後6カ月未満復帰者は最大60万円に拡充。復帰後1カ月間は4時間の短時間勤務、子どもが1歳になるまでは6時間のフレックス勤務が可能など、柔軟な勤務形態も導入している。在宅勤務制度も、子どもが1歳になるまでの間に限り、週4回まで認められる。

また、育休から復帰した社員と上司・パートナーを対象に「育児休暇復帰者セミナー」を開催。仕事と子育ての両立のコツや情報提供を行っている。

人事本部 ダイバーシティ推進グループ 担当課長 野間友惠さん

「短時間勤務を続けていると、いつのまにかマミートラックに乗ってしまうリスクがあります。セミナーでは、フルタイムに戻すタイミングはいつなのか、自身で考えていきましょうと働きかけています」と同担当課長の野間友惠さんは語る。

こうした施策によって、早期復帰者は年々増えており、18年度は育休からの復帰者63人中31人が1年未満、そのうち10人が6カ月未満だという。

一方、女性管理職の育成も、さまざまな仕掛けを施している。その1つが12年から行っている「女性リーダー育成研修」だ。

「若手社員を対象に毎年約20人を選抜し、7カ月かけて行います。結婚・出産というライフイベントを迎える前に、自らのキャリアについて考え、リーダーをめざす意識を持ってもらうのが目的です」(野間さん)