度重なる失言がニヤニヤでうやむやに
上川陽子外務大臣に対する失言について、麻生太郎副総裁は「容姿に言及したことなど表現に不適切な点があったことは否めず、撤回させていただきたい」と談話を出したそうだ。麻生氏や森喜朗元首相や萩生田光一議員の場合、そうやって撤回や謝罪をしても、またどうせ似たような失言をするのだろうと思ってしまう。
失言のたびに「また世論がうるせえなあ」と思うのだろうか。ああいった発言が出るたび、身近にいる(あるいはXにあふれる)プチ麻生、プチ森、プチ萩生田による「あれぐらいいいじゃねえか」のニヤニヤ顔を目の当たりにしなければいけないこちらの身にもなってほしい。
度重なる失言がニヤニヤでうやむやになる。やっぱ自民党政治って、家族全員でおじいちゃんの顔を立てないと成り立たない家父長制みたいなものなのかなと何度も思わされる。
自民党内にも幅広い意見があるから野党を選ばずともいいのだ、などと言う人がたまにいる。もしも上川氏が今回のことで、「いろいろな意見はあるとはいえ容姿への言及は良くない」と一言でも言ってくれたなら、それを0.01%ぐらいは信じられたかもしれない。
岸田文雄首相が野党の質問に対して「年齢・容姿の揶揄は慎むべきだ」と答えたことでむしろ、言われた当事者、あるいは女性の口からはそれを言えないのかという印象が強まった。
法務大臣を3回務めた上川氏
けれど上川氏を激しく批判したいわけではない。男性の多い現場でああいった「わきまえ」から全く無縁でいられる女性は少ないからだ。
筆者の目から見た上川氏について少しお伝えしたい。
性暴力やジェンダーの問題について女性だから関心が高く、男性だからそうではないとは一概には言えないが、性犯罪に関する刑法の大幅な改正があった時期に、女性法相の在任期間がそれなりに長かったことは覚えておきたい事実である。
2014年9月に法務大臣に就任した松島みどり氏は、就任会見で強姦罪(当時)の量刑が強盗罪より低いことに触れ、性犯罪刑法の改正を進めると明言した。彼女は「うちわ問題」ですぐに降板してしまうが、法務省内で検討会の設置が進められ、2017年に明治以来110年ぶりとなる大幅な改正につながった。