また最近、企業の女性役員比率を30%に引き上げることを目標としたイギリス発の世界的キャンペーン「30% Club Japan」への参画を表明した。もともと20年度までに女性管理職をグローバルで20%、国内で12%輩出することを目標に立てているが、その先を見据え、より女性に選ばれる会社をめざしていく。

主に首都圏では待機児童の問題で育休取得後の戻り方が難しいという課題もある。その施策として、18年3月には小さな子どもを育てる社員が安心して復職しキャリアを継続できるよう、川崎事業所に企業主導型保育事業を活用した事業所内保育所「アジパンダ®KIDS」を開設した。

「近隣保育園に入園がかなわず、退職を余儀なくされてしまう場合もあるでしょう。それでは会社の損失にもなります。セーフティーネットとしてここがあるという安心感につながるのでは」と菊地さん。保育時間は午前7時30分~午後6時30分、現在10人の社員が利用中だ。一般の保育園と違い、希望時期に入所できるのが特徴で、自分のキャリアを考えて復職できるのは非常にありがたい。

新たな価値観を創造し、全社員が活躍していこう! 味の素の施策からはそんなストーリーが見えてくる。

自由度の高い働き方でライフイベントと向き合う

「何かあってもすぐに駆けつけられる安心感があります」

味の素 バイオ・ファイン研究所 マテリアル&テクノロジー ソリューション研究所 素材開発研究室 機能材料グループ 藤原ちひろさん

バイオ・ファイン研究所で電子材料の研究を行う藤原ちひろさんは、19年4月に育児休職から復帰し、川崎事業所内の保育所「アジパンダ®KIDS」に1歳の子どもを預けて就業している。会社の保育所だけにサービスが充実しており、オムツの持ち込みは不要、汚れた衣類も洗濯してくれる。翌日の準備や通勤時の荷物が少なく済むのはうれしい。

「何より子どもと長くいられる選択肢ができたことは大きかったですね。希望どおり育児休職を期間いっぱいまで取った後に復帰できました」

一般に保育園は0歳児でないと入りにくいという現実があり、復職を考えて泣く泣く0歳で預ける人も多い。藤原さん自身も「1歳で入れる保育園が見つからなければ退職するしか道がない」と思っていたそう。

藤原さんは現在、元の職場に戻り育児短時間勤務をしているが、良い意味で以前と変わらないと話す。産休・育休取得前から復職に関する相談を上司と重ねてきたからだ。

「仕事量や割り振りの配慮はしてもらえますが、過剰な雰囲気はないですね。当然戻ってくるし、戻ってきたら何をするというのは想定されていた状態。こうした復職への理解はここ数年で劇的に変わった印象です」